てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

「結局何が言いたいのかわからない人だなぁ」と指をさされないために。

以前の仕事場に、りおさんという女性がいた。

りおさんはてつこより先輩で、与えられた仕事を淡々とこなす人。

お喋りしても楽しい人で場を和ます人だった。

しかし困った面があった。

 

あるミーティングで季節性の大量事務について話し合った。

さて今年はどう乗り切るか。上司とてつこはあれこれ案を出しては検証する。

りおさんにも意見を聞いてみる。

するとこう答える。

「別に私は。」

・・・

はて。

別に私は、、、なんだ???

上司もりおさんに聞く。「どうしたらいいと思う?」

するとまたこう答える。

「別に私は大丈夫です。」

・・・

 

うん???

 

何が大丈夫なのか。

季節性の事務が大丈夫なのか。

りおさん自身が大丈夫なのか。

それともこの議論に対する回答が大丈夫=回答したくない、なのか。

うん、全くわからん。

その後も色んな方面から質問してみるが、彼女の考えはさっぱりわからなかった。

 

後日。

大量事務の時期が迫り、準備に追われる中。

りおさんは仲の良い同僚にこうぼやく。

「やばーい。忙しくなってきて疲れたぁ。まじどうしよう?」

 

・・・

うん???

 

大丈夫ちゃうやんけ。

 

思わず回し蹴りをしそうになったがぐっと堪える。

りおさんはいつもこうなのだ。

「別に私はいいんだけど」

「別に私はそう思わないんだけど」

そう言っては特段自分の意見は言わずに、後で文句を言う。

後で文句を言う、これがとっても困る。

というか、イラッとする。

(上司がもっと頑張って引っ張れよと思うのだが、またの機会に愚痴ります)

 

話していて、もしくは考えていて

何が言いたいのかわからなくなることは結構ある。

てつこも特に若い頃は言いたいことがわからなくなって混乱したり、

上手く伝えられなくて場がしらけたり…という経験がある。

多くの人が経験あるだろう。

にしても。

にしても、だよ。

それを敢えてわざとやるかなぁぁぁ、と思う。いい歳ですし。

 

りおさんみたいにハッキリ言わないで逃げたり、

だんまりを決め込んで自分の意見を一切言わなかったり、

こういう人々は多分自分が傷つきたくないんだろうなぁと思う。

それと批判されたり否定されたりするのが心底嫌なんだろうなぁとも。

自分から動かなければ、相手も動くことはない。

 

でも、それでいいのだろうか。

少なくとも、言動・行動を求められた時にそんな対応は大人ではない。

面倒なときや楽をしたいとき、てつこも適当に濁してしまう。

大事なときほどそういう行動をしてしまう悪い癖がある。

そして後で後悔するのだ。

そんな癖があるからこそ、りおさんを見ていて自分を正す。

 

後で文句を言うくらいなら、今言っちゃおう。

後で後悔するくらいなら、今思ったことを素直に言おう。

 

子どもの頃からぐっと堪えることが多かったてつこだが、

今ではミーティングで物怖じせずに議論できる。

これでいいのだ。

そう、これでいいのだ。

(でもやっぱり他人の「後日文句」はイラッとする・・・)

良心のこもった贈り物が人をつなぐ

先日でてつこは仕事で一区切り。

異動を見据えて別のチームに移ることになった。

お菓子を一人一人に配りお礼を言う。

相手も椅子から立ち上がってお礼を言う。

会社ならではの光景。悪く言えば社交辞令というか、形式的というか。

(自分でやっといて何言ってんだという感じだが)

 

そう思いつつも温かい反応があると嬉しかった。

「昔こんなことあって大変でしたよねー」「あーそうえいば!」と昔話を思い出させてくれた人。

あまり喋ったことがないのに「あの時手伝ってくれてありがとうございました」と頭を下げてくれる人。

中越しのチームなのに普段てつこの電話応対を聞きながら「丁寧な仕事をされてましたね」と褒めてくれる人。

てつこからの感謝の気持ちに対して、同じように感謝の気持ちで応えてくれた。

大人の世界の『良い例』を見られた気がする。

 

そしてその足でてつこはある買い物をした。

それは、腕時計。

 

自分への贈り物だった。

次のステージでも""適度に””頑張れるよう、決意の一品。

デパートに行き、立派な機械式のものを見たり

電波式のものを見たり、とても楽しい時間だった。

が。

今のこの前向きな気持ちが、いつかポキッと折れてしまうんじゃないか。

そんな不安も頭をよぎる。

たくさん裏切られてきたから、どうしても自分の心を守ろうとしてしまうのだ。

悪いことも同時に考えて、上がるテンションを抑えようとする癖。

楽しい時間の合間にもちょいちょい悪いことを考えている。

 

なんとか黒い気持ちを拭い去り、腕時計を購入した。

 

前向きな気持ちと後ろ向きな気持ち。

まるで学校や会社の新入生みたいだ。

 

てつこは普段腕時計をしていなかった。

個人的に仕事上あまり必要が無く、一本だけ持っていた腕時計は

化粧台の隅にケースに入れて飾られている。

それはてつ父が入社のときにくれたものだった。

 

ヘラヘラ笑うか酒に酔って無言か、どちらかがデフォルトのてつ父が

突然プレゼントを買ってきたのだ。

てつこの就活が終わり、内定をもらった頃だった。

小さな小さな包みを開けると

かわいらしい腕時計が入っていた。

嬉しくてありがとう!と礼を言うと、てつ父はいつも以上にニヤニヤしていた。

 

当時、もらって本当に嬉しかった。

気まぐれとは思いつつ、気遣ってくれたことが嬉しかった。

仕事がんばれよというメッセージなんだと思った。

 

自分で腕時計を買えるようになった今日、あることを思い出す。

『てつこは昔から腕時計が好きで集めていた』という記憶。

小学校くらいのころ、ホームセンターで1本1000円前後の

子供向けの腕時計をねだっては時々買ってもらった。

そうだ、自分は腕時計好きだったじゃないか。

そんな自分のことも忘れてしまっていた。

数本持っていた腕時計を愛おしそうに眺めていたではないか。

 

そこではっとする。

てつ父はそのことをまだ覚えていたんじゃないか、と。

だからお祝いに腕時計を選んでくれたのではないか、と。

 

てつこは自宅に戻りシクシクと泣く。

ごめんよ、てつ父。

昔のいい思い出を忘れてたよ。

あなたは覚えていてくれたのかな。

 

勇気を出して、てつ父に連絡をとってみようかな。

そんなことを思った怒涛の一日だった。

ワタシの人生、ワタシが決める。良いも悪いも、ワタシが責任を取る。

てつこにとって、今週は節目の週となった。

4月の第一週という年度始めということもあり、

昨年から希望を出して面接やら何やら審査を受けていた

異動の希望がやっと通ったのだ。

結果が出るまでドキドキして若干上の空だった(数か月も)。

まだ暫くは今の部署にいるが、数か月以内には異動する運びとなった。

 

ワタクシゴトで忙しかったのもあり、

年度始めということで忙しかったのもあり。

一週間があっという間に過ぎた。

大好きなお酒もあまり飲めなかった。

家に帰ってきてはばたんきゅ~と床に着いた。

 

そんな中、数年前の社内研修で言われた一言を思い出した。

会社の研修で、生い立ち語るのやめません? - てつこはじと目でなにを見る?

でも愚痴った『生い立ちを振り返る系研修』での一幕だった。

 

同じグループになった同期の女性に、

「いやー小さい頃はあまりいいことなかったんですよ~」

と簡単に説明した。

「希望していた中学や大学には行かせてもらって、

 ひたすら勉強して、ひたすらバイトして、早く親元離れて頑張るぞー

 と思って今の会社を選びました。てへぺろ☆」

てな具合に。

するとその女性は目をまん丸くしてこう言った。

 

「・・・てつこさんて・・・

 自分で自分の人生を決めてきた・・・って感じですね!!!」

 

てつこは逆にびびった。

更に女性は続ける。

 

「私はてつこさんみたいに、家庭には何もなかった。

 平和だったかもしれません。疑問を感じたこともありません。

 だからなのか、私は自分で何かを決めた記憶がないんです。」

 

てつこは正直、彼女なりのお世辞なんだろうなぁと思って聞き流した。

 

しかし。

今その言葉を思い出して、う~んと考えてみる。

案外、“決めてきた方”なのかもしれないな、と。

 

てつ親両人の良い所は、てつこの希望に耳を傾けようとする所だった。

(それを叶えるかはさておき。)

そしててつこ自身に決めさせる所だった。

小さい頃のてつこには負担ではあったが、

そのおかげで大分鍛えられた。

てつ親の特性も把握しつつ、自分の進路は自分で決めようと心掛けた。

親が納得しなさそうな進路であれば、

上手く言いくるめてみようと試みた。

もし意見が通らなくても、自分なりに考えて

今はだめでも将来こうしよう!と落とし所を考えた。

 

もしかして、これってとってもイイコトなのではないか???

 

昔付き合いのあった友人にも、今の職場の同僚にも、

全て受け身で、相手に空気を読んでやってもらおうとする人種がいる。

自分では何も決めない。

自分では何も動かない。

そうだ。てつこは彼・彼女らとはちょっと違うのだ。

だから多くの上司が異動に伴う審査を応援してくれたのだ。

だから多くの同僚が早く昇格して上司になってほしいと言ってくれるのだ。

 

そう気付いた時、お腹の底から力が沸き上がってくるのを感じた。

なんてありがたいのだろう。

そして、ひたすら頑張ってきて本当に良かった。

あぁ、ワタシはワタシの人生に報いることができたのだ。

 

これからも辛いことも泣くこともあるだろう。

それでも判断していかなければならない。

後悔して心の底に落ちてひっこんでしまわないように、

今回思ったことを忘れないでいこう。

桜が舞う時期なので、人生で数少ない甘酸っぱい話をします

全国的に桜が咲き、既に散り始めているここ数日。

ネットニュースやTwitterは桜の写真で埋め尽くされ、

その度にイイネを押す。

桜の写真はいつ見てもキレイだ。

特に、自分が行ったことのない場所の写真を見ると

花見に出かけた気分になって気持ちが良い。

 

花見、といってもてつこはあまり経験が無い。

数年前の1回だけ、大学時代の友人に誘われて参加したことがある。

 

地元で桜の名所として有名な公園に集合だった。

公園で飲むのかと思いきや、桜もそこそこに近くの居酒屋に入った。

20人以上いただろうか。

居酒屋の大部屋で食べて飲んでの大騒ぎだった。

思い出話に花が咲き、とても盛り上がった。

普段大勢と飲む機会があまりないので、

てつこも楽しんでいた。

 

当時仲が良かった男の先輩と席が隣になった。

おー久しぶりっすねぇと話が盛り上がる。

 

先輩「そういえば、カイ君とはどうなったの?」

てつ「…はい?カイさんと?」

先輩「とぼけるなよー」

てつ「いや、マジで話が見えないっす。何もないですよ?」

 

先輩が怪訝な顔をする。

 

先輩「…あれー。そっか。そうなのか。」

てつ「…???」

先輩「……カイ君さー、多分てっちゃんと結婚したかったみたい」

てつ「………はいぃぃぃ???」

 

混乱するてつこ。

 

先輩「だからぁ、カイ君は結婚を考えてたっぽいよ」

てつ「…え、だって、カイさんと付き合ってもいないっすよ」

 

そう。

てつことカイさんは恋人になったこともない。

告白されたこともない。

デートしたこともない。

だから、てつこは混乱した。

をいをい、色んな過程を飛び越えて『結婚』とは何ぞや??

 

カイさんは男前で女性に優しく、モテるタイプだった。

なのに女性の影がなく、飲み会に行ってもおとなしい人だった。

不思議な人だなぁと当時思っていた。

 

酔っている先輩は結婚したかったみたいだ!!とヒートアップし、

てつこの疑問に耳も貸さない。

いやーあはは、とお茶を濁しててつこはトイレに行く。

そして席に戻ると、なんとドラマの展開のごとく

カイさんがてつこの席の近くに移動していた。

 

・・・

残念ながらそこで艶のある展開にはならなかった。

お久しぶりですーから始まって、昔話をするにとどまった。

ただ、

「てっちゃんは今幸せなのー?」

と聞かれて、てつこは「えぇ、まぁ、あはは」と笑った。

カイさんはぼそっと「俺、地方の実家に帰る予定なんだ」と言った。

寂しくなりますね、とてつこを含めた皆で別れを惜しんだ。

 

 

飲み会は解散し、一部のメンバーは夜桜を見に公園に戻った。

てつこもフラフラとついて行った。

めちゃくちゃ飲んだので千鳥足だった。皆もそうだった。

 

カイ「てっちゃん」

てつ「………なんすかー」

カイ「頑張れよ。幸せになー」

 

ヘラヘラとカイさんは笑っていた。

そのまま有志による夜桜会も解散になった。

 

帰りの電車の中、てつこは一人ぶつぶつとつぶやく。

「ずるい。ずるいですよ…」

 

こんないい歳になってから

こんなに日が経ってから

あなたのことが好きでした的な空気出すって、ずるいだろう。

若くて楽しかったあの頃に、なんでそういうこと言ってくれないんだ。

てつこは恋愛とか苦手だ。

異性からの気持ちや目線に気付いたり対応したりするのが苦手だ。

そんな干物女でも、やっぱり恋愛には憧れた。

 

 

何より。

カイさん、一時期あなたのこと、ちょっと好きだったんですよ。

だからそんなの、今更ずるいっすよ。

でもまぁ、幸せになりますよ。きっと。

快適に眠りたいと願うたびに思い出す、あの「おばあちゃん」。

人は誰しも、心地よい眠りで一日を終えたいと思う。

すっと寝入ってぐっすり眠り、朝しゃっきり目が覚める。

これほど幸せで健康的なことはない。

そうとは思いつつ、最近眠りが浅かったり中途覚醒してしまったり、

なかなか素直に眠れないてつこは

かかりつけの精神科から睡眠薬を頓服でもらっている。

休みの前日など、ぐっすり寝たいときだけ服用する形だ。

 

先日の晩も睡眠薬を飲んだ。

布団に入り、明かりを消す。

ふと思い出す。

一昨年入院していたときのこと。

 

てつこは最大8人のベッドがある大部屋に入院した。

小さな固いベッドが狭い部屋にぎゅうぎゅうに並んでいた。

だからちょっとした物音も声も聞こえてくる。

夜9時の消灯を迎えても、

誰かがトイレに行く音や寝息の音で

とてもぐっすりと眠れる環境ではなかった。

 

その部屋の一角におばあちゃんが一人入院していた。

とても痩せ細り、食事もほとんど取らない。

入浴の介助も受けない。

手術を控えているらしく、いつも看護師さんに不安を訴えていた。

そのおばあちゃんは夜の消灯前、決まってナースコールを押す。

そして弱々しい声でこう言うのだ。

「…あのぅ、…サイレース、くださーい…」

 

サイレースとは睡眠薬の一つだ。

おばあちゃんも熟睡できないらしく、いつも睡眠薬を飲んでいるようだった。

入院の最初のうちは大変なんだなぁと思っていた。

しかし、毎晩毎晩ナースコールでお願いする。

そしてちょっとでも看護師さんが持ってくるのが遅いと、

ナースコールを連打して

「…あのぅ、まだですか。まだですかぁー???」

と彼女なりの大声で苛立ちを伝えるのだ。

消灯後もそれが続く日があり、正直少し困るなと思い始めた。

 

ある晩も催促が始まった。

少し遅れて看護師さんがやってくる。

「・・・・・・あれ?」

看護師さんが声を上げた。

なんだろうと思い耳を澄ませてみる。

「・・・おばあちゃん。・・・おばあちゃん??」

看護師さんが語り掛ける。

「・・・ねえ、おばあちゃん。・・・寝てるじゃない。」

 

( ^ω^)・・・え?

ばあちゃん、寝てるの・・・?

 

「・・・はっ、看護婦さぁん。寝てないです。遅いですよぉ。」

「おばあちゃん。寝れるならこのお薬いらないよね?」

「なんでそんなこと言うんですかぁ。」

「だっておばあちゃん、今寝てたじゃない?」

 

押し問答が続く。

ってか、眠れるなら確かにいらないのでは・・・。

 

その時はちょっとした笑い話として聞いていたが、

後日よくよく考えてネットを見てみたら、

この薬の副作用に「依存」があるようだった。

毎晩言わないと薬を出してもらえないことからも、

医者側が慎重になっていたのかもしれない。

何より、おばあちゃんのあの苛立ったか細い声は少し異常だった。

もしかしたら、もう既に薬がないと不安な域に

入ってしまったのかもしれない。

 

おばあちゃんはまだあの病室にいるのだろうか。

元気になっただろうか。

毎晩の薬と不安から解放されただろうか。

 

今こうやって、てつこは自分の疲れを認識し、

布団の温かさの中で睡魔が来る感覚と共に眠りにつけることが

健康である証なんだろうなと思う。

たまに薬に頼るときはあるけれど、

それでも苛立ちや不安がなく眠りにつけることは幸せだ。

中途覚醒や悪夢のないもっともっと良い眠りにつけたならもっと幸せだろう。

そうなるといいなぁと思いつつ、意識が遠のいてくのであった。

むかしむかし、ある所に「がくれき」を気にする者がおってな・・・

ちょっと前から就活が本格化しているようだ。

後ろで一つに髪を束ねている女の子と、

抑えめなツンツン髪の男の子が黒一色のスーツを着て

疲れたなーという顔で電車に乗っている。

 

とあるネットニュースで「学歴フィルター」が取り上げられていた。

就活で会社に応募する際、偏差値の高い大学と

そうでない大学で企業側の反応が違ったとのこと。

色々考察した結果、学歴フィルターが存在しているのかもしれない…

という記事の(煮え切らない)締めくくりだった。

 

企業に学歴フィルターが実際にあるのかどうかは知らないが、

学歴によってある程度「区別」されるのは実際にあるし、仕方のないことだろう。

ある程度の学歴の人はそれなりに努力していたり、

それなりの生育環境だったりするわけで、

それなりの人材であろうと予想できる。

学歴が一つのバロメーターなのは確かだ。

 

・・・と、肯定的に考えているてつこだが、

なんとまぁすっとんきょうな人物と出会ったことがある。

 

一人は学生時代のコンパで知り合った、学歴自慢男。

彼の決め台詞を今でも覚えている。それは

『俺、〇〇〇(←大学名)だから☆(キリッ』

 ※この大学の方々の名誉のため伏字でお送りします※

学歴自慢のお手本と言わざるを得ないほど、

会話の最後に必ず『俺、〇〇〇だから☆(キリッ』を言うのである。

 

自慢男「てっちゃん、〇〇大だよね?何学部?」

てつこ「あぁ、社会系です」

自慢男「そっか。俺、〇〇〇だからさ☆ 英語が得意なんだよね」

てつこ「はぁ、すごいですね~」

自慢男「留学しようと思ってるんだ。俺、〇〇〇だからさ☆

    知ってると思うけど海外との交流が盛んな大学なんだ☆」

 

こんな会話がコンパ中続いた。

酒を飲みに来てるのに、大学の入学説明会にでも来た気分だった。

そして見事なまでに全ての会話が彼の学歴自慢に帰結する。

本当にこんな奴が世の中に存在するのかと感心したものだ。

就活や入社後に是非失敗して鼻がへし折れればいいのにと、

黒いてつこは当時思った。

 

もう一人は、数年前一緒に働いていた男上司。

良く言えばひょうきんで明るい上司、

悪く言えばのらりくらりと責任を回避する頼りない上司、だった。

彼は新しく来た人、特に若い人に

必ず最終学歴を聞くことで有名だった。

 

てつこ「お疲れ様でーす」

男上司「お疲れ!ここも大分慣れてきたね。…ところで、大学ってどこだった?」

てつこ「(キターーー!)・・・はぁ、〇〇大です」

男上司「おぉ!あそこか!〇〇さんも同じ出身だよ!」

てつこ「(なんだその情報網)あぁ、そうなんですか」

男上司「いやー、いい学校だよねぇ。俺、そこの近く通ったことあってさ」

 

いや、通ったことあるくらいで知った顔されても…。

この男上司のいやらしい所は、彼自身の出身校を聞くと

「いやー!俺の学歴なんてどうでもいいんだよ!あっはっは」

と言って立ち去る所である。

他人に聞いといてそれを平然とやるその図太い神経を分けて欲しい。

結局、彼は自身の学歴を秘密にしたまま異動していった。

(別にどこでもよいのだが)

 

世の中には「学歴」に囚われて

しょーもないことを気にする輩が実際にいるもんだ。

大企業の役員とか政治家とかにでもならない限り、

一つのバロメーターでしかない。

今は就職氷河期ではないのだから、大学名をそんなに気にせず、

学校で何をやってきたかをきちんと答えられれば問題ない。

就活は疲れるけれども、希望を持って乗り切ってほしいなぁと思うのであった。

家族を愛しているのなら、あなたに何ができるのか。

てつ母からまた連絡が来た。

会いたい。連絡をくれ。それだけの内容だった。

 

てつこはてつ母からの一切の連絡に応えていない。

でもスマホの番号もメアドも昔から変えていない。

連絡手段を本当に全て絶ってしまうと、

何が起きるかわからないため。

てつこの友人や恋人に何度となく接触を試み、迷惑をかける。

時には探偵を使われ、時には会社に突撃された。

それらの出来事はてつこにとって非常に怖いものだった。

そして同時にとても恥ずかしいものだった。

もし連絡手段を絶って、てつこという「空気穴」を塞いだ時、

彼女にどんな反応が起きるのか、

娘であるてつこにも予期できない。

でも多分、てつこにとってマイナスでしかないだろう。

だから番号もメアドも変えない。

 

てつ母から連絡が来るたびに、

会いたいと言われるたびに、

昔の実家のトイレを思い出す。

 

いつからかわからないが、小さいてつこはふと気付いた。

トイレの壁の、壁紙がちょっと剥がれたところに、

   I Love Family

と小さい文字で書かれていた。

明らかに、てつ母が書いたものだった。

 

た。

 

気味が悪かった。

呪いの言葉のように思えた。

当時のてつ家は荒廃し、会話もなく、金もなく、愛もなかった。

そんな環境で『家族を愛しています』???

意味が分からない。

 

誰が家族を壊したのか。

それを彼女はわかっているのか。

 

てつ母は、ずっと『家族』が欲しかったのだろう。

てつ母は、ずっと誰かに愛されたかったのだろう。

でも貪欲で強欲な彼女について行ける人なんていない。

彼女がいつか自分の過ちに気付き、自らを正さない限り、いない。

自ら、娘も夫も親も友人も遠ざけたことに気付かない限り、無理だ。

 

なぁ母よ、あなたには新しい家族がいる。

なぜ、新しい家族を大切にしない?

色々と上手くいっていないのは知っている。

けれども、今の道はあなたが選んだ道だ。

あなたは私の倍生きているのだ。そんなこともわからないのか。

 

なぁ母よ、私はもう大人だ。

仕事を持ち、生活費を稼ぎ、少ない友人と楽しく生活している。

そして自分の生き方に責任を感じている。

それが、何故あなたは出来ないのか。

何故あなたは私をまだ娘として扱おうとするのか。

 

 

 

なぁ母よ、

もういい加減

子離れしてくれないか。

もう疲れたよ。