見てはいけないものを見てしまった
トイレに入って疲れたなぁと溜息をつくと、ふと思い出すことがある
てつこが小さかったある日のこと、
いつもの通り夫婦喧嘩が起きていた。
ひと段落したのか?てつ父は廊下を通りトイレに入った。
少し経ち、一人ぶつぶつと文句を言っている母も、廊下へ歩き出した。
小さいてつこは特に用は無かったが、てつ母の後ろをよちよちとついていった。
トイレの前を通った瞬間だった
てつ母は無施錠だったトイレのドアを乱暴に開けた
てつ父が入っているのに
てつこが後ろにいたのに
てつ母の後ろについてきていた てつこの目に、うつむきながら便座に座るてつ父が映った
てつ父は突然ドアが開けられたことに全く動じていなかった
魂が抜けたように、うつむいていた
開けられても、てつこが見つめても、何の言葉も発しなかった
異様な雰囲気が漂った
その時のてつ父はいつにも増して、細く小さく見えた
父としての威厳はかけらも無かった
てつこの中で
「てつ父=かわいそうな人」
となったのはこの時からかもしれない。
だからこそ、こんなにも鮮やかに思い出すのだろう。
あの時のてつ父の小ささが、頭にこびりついて離れない
こんな嫌がらせ、何の意味がある???