てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

てつ家の食卓(2)

てつこの良い所は好き嫌いがない所だ

基本、なんでも残さず食べる

それが礼儀だと両親から学んだ

 

てつこが小学校に上がってしばらくすると、

てつ母は料理をしなくなった。

代わりに、仕事帰りのてつ父がごはんを用意してくれるようになった。

元々手先の器用なてつ父は、苦戦することなく味噌汁を作ったり野菜炒めを作ったりしてくれた。

シーフードカレーは少ししょっぱかったが、おいしかった。

それでも平日は仕事なので夜が遅い。

自然とスーパーなどの総菜が食卓に並ぶようになった。

 

コンビニの餃子は相当な頻度で食べていた。

ラー油と醤油の小袋をつけたままレンジで温めて爆発したり、

温めすぎて容器が溶けてぐちゃぐちゃになったり、よくしていた。

その度にてつ父はケラケラと笑って、やっちまったーと言っていた。

勿体ないからてつこは率先して食べた。

プラスチックのにおいが口に広がるけれども、不思議と気にならなかった。

将来、自分が産む子どもに何か影響あるかな?と真面目に考えたことは正直あったけれども。

 

てつ母はてつ父の手料理もスーパーの総菜も、あまり口にしなかった。

口にしたかと思うと「しょっぱい」「まずい」「くさい」と罵るだけ罵って、

食べられるものだけを食べて、食卓から離れた。

 

段々と、てつ父も料理をしなくなった。

休日はファミレスか、ファーストフードのハンバーガーやデリバリーのピザ。

カップラーメンもよく登場した。

てつこがおいしいと褒めたカップラーメンを、

てつ父は仕事帰りによく買ってきてくれ、てつ母はどこからか箱買いしてきた。

一週間は生き延びられるような量のカップラーメンがてつ家に備蓄された。

 

てつこは子どもの頃から、基本何でも食べた

出されたものは何でも食べた

それは、てつ家の食卓で学んだこと。

誰かが食べないとそれはゴミ箱に行く。

そしてそれを作った人・用意した人がとても悲しい顔をする。

非常にシンプルで当たり前のことなんだけれども、人の心を傷付けるとても残酷なこと。

てつこはそんな残酷なことはしたくなかった。

嘘でも『おいしいよ』と言って口にすれば、目の前の人はすぐ笑顔になるんだから。

楽しい食卓の作法と礼儀って、とても簡単なこと。

 

 

 

でもそんなこと、小さいてつこが毎食毎食気を配らないといけないことだったのかな。