身体の弱さ、心の脆さ、信頼の薄さ(1)
てつこが小学校に上がる前の出来事。
てつ母は元々身体が弱かったらしい。
少なくとも、てつこの記憶を辿って一番古い記憶でも、てつ母はよく体調を崩していた。
その古い記憶。
てつ母はよくトイレに駆け込んでいた。
てつこが一人でリビングで遊んでいても、テレビを二人で見ていても、料理をしている最中でも、
何か心理的なきっかけがあったのかはわからないけれども、
よくトイレに駆け込んでいた。
てつこが心配して駆け寄ると
「来ないで!」と言われ、近寄れなかった。
それでも何回もあるもんだから、より心配になってトイレを覗き込む。
苦しそうに咳き込み、便座にもたれかかるてつ母の姿があった。
その度にてつこはトイレの扉の前に立ち尽くした。
小さなてつこに出来ることなんで、何もなかった。
苦しそうに
「ごめんね、ごめんね…」と謝るてつ母の声を
ただただ近くで聞いているだけだった。
あくる日も突然トイレに駆け込んだ。
かと思ったら、その扉の前で力尽き、倒れこんだ。
てつこは驚いた。
とっさの判断で、大きな青いバケツを洗面所からとってきて、倒れたてつ母の顔の横に置いた。
てつ母が吐いた。
ここからは不思議な記憶。
バケツに目を落とすと、大きな大きな幼虫がいた。
「てつ母が虫を吐いた!!!」
てつこは焦った。
虫のせいで苦しんでいるんだ!とその時は本気で思った。
後日、てつ母に「なんで虫を吐いたの?」とも真面目に質問した。
もちろん「?」って反応だったけれども。
あまりに衝撃的で、てつこ自身の記憶にモザイク処理でもかかったのだろう。。。
身体が弱いだけなら、まだ、よかった。
てつこはまだまだ小さいけれど、既にてつ家は壊れかけていた。