てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

私は何も出来ない人間。そんな自己否定の先にある『何か』。

てつこは、

てつ母からなじられて育てられた

てつ母から何でもかんでも「あなたのため」と言われて責任を転嫁させられた

てつ父は会話してくれなかった

てつ父はてつ母から殴られて蹴られて小さくなっていた

 

てつこは、

「何もできなくてごめんなさい」とよく泣いた。

てつ父が傷ついてもてつ母が泣き喚いても、何もできることが無かった。

 

それは学生になっても同じ。

てつこ自身の将来を考えることだけで精一杯だった。

バイトしてもてつこ用のお金しか稼がなかった。

そして社会人になっても同じ。

お給料が良くないからてつこ自身の生活で精一杯だ。

てつ父が仕事を辞めても養えない。

てつ母が不倫相手から見放されても養えない。

 

今現在も同じ。

親二人を思い出して、生きているのか心配しつつも養えない。

そんな負の感情がぐるぐる回って、てつこ自身の身体に異変が起きても自分で気付けない。

 

てつこは何もできない子。

 

何かをやりたいと思って、何かをやり遂げたことが無い子。

何かを満足にやったことが無い子。

何ができるか、自分でわからない子。

 

周りから責め立てられても、自分自身奮い立たせても、できないことはできないよ…

 

情けない。

かなしい。

できない。

ずっとずっとそんな感情に頭のてっぺんまで浸かって、染まっていた。

 

それでも少しずつ

てつこがよく言われること、よく褒めてもらえること、

それらを一つ一つ拾っているのが今の状態。

「気が利く」「優しい」「周りの変化にすぐ気づく」「丁寧」

褒められてもきっと‘おべっか’だろうと思っていた。

でもどうやら相手は本気で言ってくれているらしい。

 

もしかしたら、何か一つくらい出来ていることがあるのかなぁ

 

そうやって前を向くと、すぐに悪寒がする。

『てつこは何もできない子』

勘違いをするんじゃねーぞと、もう一人のてつこが囁く。

そうやって他人を信じて調子に乗って、すぐ失敗するのがお前のダメな所なんだよ。

悪あがきするんじゃねーよ、てつこ。

 

『人を信じない呪い』と同じように、

強力接着剤で貼られたレッテルをどうやって取ればよいのだろうか。

その先に、

自分を肯定できる思考回路が出来上がった時に、

てつこはどんな「てつこ」になるんだろうか。

重苦しい日々は無くなるのだろうか。

それとも意外とそんなに変わらないだろうか。

とにかく今は明るい未来を信じて、一つ一つを紡いでいくしかないんだろうか。

 

そうやって今日も空しい気持ちになって泣くのである。