てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

父への身体的暴力と、てつこへの心理的な暴力(1)

最近ようやく、てつこ自身の心の傷の一つを客観的に捉えられるようになった。

それは

 

 

てつ母からてつ父への暴力だった。

 

 

てつ家では最初、親子川の字で寝ていた。

夫婦喧嘩が絶えなくなってからは、てつこに子供部屋が与えられた。

そして夫婦関係が完全に破綻した頃、

てつ母はてつ父が臭いだの邪魔くさいだの文句をつけて寝室から追い出した。

 

てつ父はダイニングの食卓テーブルの横に、

布団を小さく折りたたんでひいて寝るようになった。

それでもてつ母の怒りは収まらない。

「邪魔だ!」

夜寝るために横になったてつ父を、容赦なく踏みつける。

ドンドンとにぶい音が響く。

てつ父は小さな声で「痛いよ」と言うが、てつ母の蹴りが止まることはない。

片足で蹴り上げていたものが、椅子に手をついて両足で踏みつけるようになっていった。

 

てつこの目の前で「それ」は毎晩繰り広げられた

 

てつ父は逃げるように今度は玄関前の廊下に布団をひくようになった。

てつ母はトイレに行く際『ついでにてつ父に蹴りを入れて』いくようになった。

ダイニングで寝る時よりは頻度は収まったけれども、

それでも執拗に蹴り倒しに行くのが『異常』だった。

 

廊下で度々起きるその暴力を、

てつこは自分の部屋の入口から遠目に見ていた。

そんなもの、見なくていいのに見に立っていた。

心配だったのか見張っているつもりだったのか、今のてつこにも思い出せない。

 

会社から帰宅してご飯を用意して掃除をして。

平日の家事をこなした疲れ切ったてつ父は、その内廊下にそのまま寝転ぶようになった。

冬の寒い日でもそのまま倒れるように横になった。

それを見かねて、小学生のてつこは布団や毛布をてつ父の寝床に持って行った。

てつ父は小さな声で「ありがとう」と言ってくるまった。

 

この頃から、ただでさえ細身のてつ父はガリガリに痩せていった。

そして常にお腹や胸の辺りを手で押さえるようになった。

痛いの?とてつこが聞くと静かに頷く。心配であれこれてつ父に声をかけるようになった。

 

そんな毎日のやり取りに、てつ母は嫉妬でもしたのだろうか。

てつ父に対して

「わざとらしい真似すんな!」

と言っては殴りかかるようになった。

だからてつこも必要以上に心配するのは辞めた。

てつこが声をかけるだけで殴られたり蹴られるなら、後でこっそり声をかけよう。

 

 

てつ家には「お互いの心配をする」という人として最低限の文化すら無くなった。