「青空」が持つ魅力と魔力
ここ数日全国的に天気が良い。
青空が広がり気持ちが良い。
…はずなのに、てつこは得体の知れぬむなしさを感じた。
なんだろう?
雨が続いていたせいか、仕事が忙しいせいか、何かのせいでナーバスになっていたのだろうか??急に晴れたことで気持ちが不安定になったのか??
ただ、この虚しさは初めてではない。
仕事の合間に外を見て青空だと不思議と込み上げてくる。
休日にふと空を見上げて青空だと込み上げてくる。
気持ちも晴れ晴れとするはずが、なんだか逆に不安になる。
青い部分に吸い込まれそうになる。
てつこお得意の漠然とした不安。
なんでだろう?
そう考えて答えを一つ思いついた。
『遠くに行きたくなる』のだ。
暗黒時代だった子どもの頃、晴れの日は時間があればベランダに一人よく出ていた。
外を見て、遊んでいる子達を見て、空を見て、時間を潰すのだ。
空が青い。
天気が良い。
そんな日は誰しも外に出たくなる。
てつこもそうだった。だが外出はてつ母に禁止されていたから叶わない。
どっか行きたいなぁ。そんな気持ちでいつも空を見上げていた。
もう一つ、印象的だった思い出。
お見舞いに行く途中病院の手前に差し掛かると、上の階にいるおじいちゃんが必ず目に入ってくる。
なぜなら窓際に一人立ち、ずーっと手を振っているからだ。
最初、てつこは後ろにご家族でも来ているのかと思い振り返った。
誰もいない。
それが2回続き、ようやくてつこは理解した。
誰に対してでもない、ただ単に外に向かって手を振っているだけのこと。
それが彼の日課なのだろう。
ちょうどそう気付いた日は、雲一つない青空の日だった。
青い空とおじいちゃんの姿が、相反する感じで印象的だった。
そして今日。
三連休の中日であった。てつこはぶらぶらと外出していた。
カフェでコーヒーを飲みながら空を見る。
明日で休みが終わるなぁ。
毎週繰り返すこの思考。ただ今日はいつもよりむなしかった。
『どこかへ逃げてしまいたい』
一瞬そんな感情が頭をよぎり、はっと我に返る。
心が弱気になっていてよろしくない。
てつこの中の「青空」に対するイメージが複雑で、色々な想いを思い出させる。
ここは都合よく青空のせいにして、今日も処方された薬をきちんと飲んで眠りましょう。
と、自分に今言い聞かせました。