てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

気が利く子どもは、是か?非か?

てつこは休日を利用し遠出した。温泉街や漁港をまわるプチ旅行だ。

そんな中、温泉施設で受付の順番待ちをしていると

目の前に中学1~2年くらいの女の子がいた。

その子は母親らしき女性とその親戚らしき団体と一緒にいた。

受付には親戚らしき団体がわらわらと群がり、

母親らしき女性はぺちゃくちゃ喋りながらお金を払おうとしていた。

正直、ちょっと早くしてほしーなーと思っていた。

すると

 

「すみません!」

 

目の前にいた女の子が突然謝ってきた。

てつこと友人はきょとんとする。

 

「すみません!あの、本当にすみません!」

 

いやいいよいいよ、どーぞどーぞ、と焦る女の子をなだめた。

よく見ると随分細い体型で少し気になったが、何より丁寧な子だなぁと感心した。

 

温泉に入り食事処でてつこと友人は酒盛りをしていた。

同じ食事処の一角ではかなりの大人数が貸し切って宴会をしていた。

友人が気付いた。

「・・・あの子、さっきの子だ」

 

てつこが振り向く。

なんとまぁ、さっきの女の子がお給仕をせっせとしていた。

盛り上がる大人たちに酒を注ぎ、注文をとり、店員から料理を受け取っては走って各卓に届けているのだ。

・・・なんとなく漂う違和感。

そう、走り回っているのはその女の子だけなのだ。

そこまでするか?というくらいせっせと働くその子を見ていて、てつこ達は段々と不憫に思えてきた。

 

もしかして、あの子はいつもあんな役回りなのか??

 

てつこは今も昔もよく『気が利くね』と評価される。

それは長所でもある。

だが、子ども時代を振り返るともろ手を挙げて誇れる長所でもない。

頑張っても頑張っても、てつ父もてつ母もなかなか褒めてはくれなかった。

てつ母が誇らしげにてつこを褒めるのは、ピアノコンクールで入賞したり

親戚から賢い子だと言われたり、親の自慢になる頑張りが認められた時だった。

だからこそ、他人の目につきやすい頑張りを子どものてつこは重ねてきた。

その内自然と『気を遣う』方法を身につけ、『気が利く』という評価を得た。

そうやって生きてきた。

 

てつこは勝手に女の子に対して思いをはせる。

君が大人に代わって謝る必要があるのかい?

君が配膳する必要があるのかい?

君は手のかからない子どもで気が利く子どもなんだろう、

でも、親や他の大人に必要以上に気を遣ってはいないかい?

 

勝手な妄想なんだろうけど、少なくとも大人の飲み会でお給仕なんてしなくていいのになぁ。大人でも疲れちゃうことなのに。

そんなことを思いながらビール片手に宴会をチラ見していたのであった。