てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

外から会話が聴こえてきて、我が家にトラックが突っ込んでくると信じていた、あの頃。

今日は久しぶりにメンタルクリニックへ行った。

手持ちの薬が無くなってしまった。

切らさないようにしなければならないのに、またやってしまった。

平日は「薬がまだあるし今日行かなくていいかなぁー」とか、

「今日は疲れたから帰っちゃおうー」とか、ついつい先延ばしにしてしまう。

 

いつもの薬をもらい、帰路につく。

もう何年も飲んでいる薬。

最近はジェネリックが出たとのことで、それをもらっている。

価格が以前の3分の1くらいになり、経済的にとても助かる。

 

ここしばらくは精神的にとても落ち着いている。

上下することはあるけれど、以前と比べると大分違う。

統合失調症で休職していたときは、子ども時代と同じくらい『暗黒』だった。

 

 

ある日突然会社に行けなくなった。

玄関で泣き崩れ、外に出るのがすごく怖くなった。

それからは毎日毎日布団に横になって過ごした。

訳もなく涙が出た。

その内不思議なことが起き始めた。

窓もカーテンも閉め布団を頭からかぶっているのに、声が聴こえる。

女性二人の会話。

内容はいつもわからなかった。

けど、ヒソヒソとてつこのことを噂されている気がした。

  やめてくれ。

  ごめんなさい。

  どこか行ってください。

そんなことを念仏のように唱えながら、耳を手でふさぐ。

目をつぶると、目の前に四角い物体が現れる。

それが上から落ちてくる。

  あぁ、潰される・・・!!

はっと目を開ける。勿論布団の中なので真っ暗だ。車の音が聞こえる。

  もうすぐトラックが突っ込んでくる気がする。

  飛行機が落ちてくるかもしれない。

  このまま家ごと潰れてしまう。

 

汗だくで布団から出る。

時計を見るともう夕方だった。

『また、一日何もしないで終わってしまった』

そんな後悔の気持ちが込み上げ、また泣いて、また寝る。

 

通院や買い物のため外に出るときは、玄関の鍵を何回も確認した。

玄関を離れてもすぐ戻り、また鍵を確認する。

近所に響きそうなくらい、ドアノブをガチャガチャする。

誰かに指をさされている気がして、はっと周りを見渡す。勿論誰もいない。

玄関を離れるのに10分15分かかっていた。

歩き出すとズボンをはき忘れている気がして、何度も足を触る。

スーパーの窓ガラスに自分を映し、服を着ていることを確認する。

  そりゃそうだ。裸で出歩くわけがない。

  でも万が一・・・。

その繰り返し。

駅にたどり着くまで一体どのくらいかかっていただろうか。

 

 

そんなことを思い出していたら、地元の駅に到着した。

今住んでいるところは当時とは違う場所。

病気をしっかり治すためにも環境を変えた方が良いと助言を受けたのだった。

昔を思い出してうじうじするてつこには、意外と効果があった。

 

お医者さんからは、病気ではあるけれど

てつこ自身の性格と絡んでいるから薬は飲み続けないといけないよ、

と言われている。

実際、勝手に薬を辞めてしまった時期は精神的に脆くなっていた。

そして根拠のない考えや昔の思い出が脳内に再生され、

鍵の確認とトラック妄想が若干復活してしまったのだ。

だからやっぱり薬は飲まないといけない。

 

『障害は個性だ』

なんていう主張がある。以前はすごく抵抗があった。受け入れられなかった。

今でもそんなすっきりした言葉では言い表せないと思っている。

けれど、ちょっとわかる気もしてきた。

てつこから心の葛藤を取ってしまったら、何が残るんだろう。

そんな疑問を感じるくらいなら、全部ひっくるめて「てつこ」だ。

少しずつ『自分』を肯定的に客観的に見ていけるようになろう。