てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

武器がチョークの鬼教師と、落ちこぼれていじける女子中学生の話。

 てつこは中学の頃、落ちこぼれだった。

地元の小学校に通っていた頃は勉強がブイブイ出来てブイブイ調子にのっていた。

ところがどっこい、私立中学は出来る子が集まるのであっという間に「中の下」。

てつ母は「あなたはやればできる子なのよ!!」と応援したが

一向に成績は良くならない。小学校時代に熱心に勉強した反動もあり、

授業にあまり身が入らない。テスト勉強に集中できない。

そしてついに「下の下の落ちこぼれ」になった。

 

中学2年生になり、化学の授業が始まった。

てつこはまるでダメだった。赤点の常連だった。

化学が苦手だった理由は『先生』にもあった。

 

ものすっっっっっっごく、キビシー先生だったのだ。

 

齢は不明のおじさん。名はジョー。御多分に漏れず、顔が怖かった。

それだけではない。

授業中に声を発すると激怒する。(怖すぎてお喋りなんてできない)

怒るとマジでチョークを投げつける。(一応床に向けて、だったけど)

黒板に化学式書くのめっちゃ早い。(ノート追いつかない)

黒板消すのもめっちゃ早い。(同上)

毎回のように抜き打ちテスト実施。(もはや抜き打ちではない)

 

テストはジョー先生の席にまで取りに行かなければならなかった。

赤点のてつこは「ちゃんとしろぉ!」といつも怒られた。

 

ある日、改心してめちゃくちゃ勉強した。

準備万端でいつものテストに臨んだ。

そして翌日、先生の席に取りに行った。

 

結果は・・・また赤点。

 

ダメだった。全くダメだった。てつこは思わず、

「あああああああ!ちっくしょー!」

と本気で悔しがった。

「・・・!」

てつこははっとした。

やばい。

ジョー先生の目の前で汚い言葉を使ってしまった。怒られる・・・!

 

「てつこ。えらい!!!!!!!」

ジョーが叫んだ。

「・・・?」

てつこはきょとんとする。

「そうだ、てつこ。いいぞ。悔しがれ。その調子だ!あっはっは!」

 

てつこは肩をポンポンと叩かれた。そして何が起きたかわからないまま

職員室を後にした。扉を閉め、数歩歩いてやっと理解した。

 

「・・・あぁ、私、褒められたのか。」

 

その日からだった。

何かが吹っ切れたように、授業の内容が頭に入ってくるようになった。

無理に考えない。知ったかぶろうとしない。

ただただ、授業を聞いてノートを取る。そして反芻する。成程と関心を持つ。

不思議だった。

頭の中がすっきりした気がした。

 

翌週の化学のテストは満点をとった。

ジョーはご機嫌だった。そしてこう言った。

「てつこ、お前はえらい。それでいいんだ。やればできるじゃないか!」

 

結局は具体的に何が良く影響したのかわからない。

ただ、頑張りが認められた気がした。胸のつかえがとれた感じがした。

あの時のさーっと霧が晴れていく心情を今でも覚えている。

もしジョーに出会わなければ、下の下レベルのまんまだったかもしれない。

もっと言えば、ウジウジといじけてひねくれたまんまだったかもしれない。

その背中をバシッと押してくれたのはジョーだった。

 

ジョー先生、本当にありがとうございました!!!!!