死んだ魚の目のOLは、0点をとった高校時代を思い出し感傷に浸る。
連日暑い日が続く。
帰りの電車内も蒸し暑かったりクーラーが臭かったりして、
あんまり快適ではない。混んでいるし。
なにより自分自身が疲れている。
大した仕事をしていないけど、疲れている。
ガラス越しに映った自分の顔を見て、老けてんなーとがっかりする。
車内の夏らしい広告が目に留まる。
入道雲がもくもくとしている夏の青空。
あぁそういえば・・・と、高校時代のことを思い出した。
高校3年の夏。
数学ⅢかCか忘れたが、どちらかのテストがあった。
てつこは文系まっしぐらだったが、何故か履修してしまったのだ。
しかも数学は苦手。
大学入試では使わないことがほぼ明らかだったので身も入らない。
他の科目のテスト勉強を優先して、数学は一切手を付けなかった。
テスト当日。
案の定、最初の3問くらいしか解けない。
こりゃ最下位だろうなーと心の中で頭を抱えていた。
テスト結果の返却日。
先生が淡々と名前を呼んで、淡々と答案が返却される。
てつこの番。
答案に目を落とすと・・・0点!!!
なんということでしょう。解いた3問、かすってもいないじゃん!!!
っつーか、0点て!!!
リアルで初めて見たぜ!!!
↑こんなことを思っていると、不思議とテンションが上がってしまった。
そして、
「ぎゃっはははははははは!」
と爆笑してしまったのだ。先生や他の生徒の目の前で。びびる先生。
そんな中、友人が駆け寄ってくる。
「どうしたんよ???」
「見てこれ。」
てつこは0点を見せる。
「まじでかーはっはっはっはっはっは!」
爆笑する友人。
そして。
「私も!!!!!」
友人も0点だった。
二人でまた腹を抱えて笑った。
そして青春ドラマのように肩を組んで教室を出た。
(授業は終わっていたので大丈夫。)
先生が「点数言うなんてしちゃだめよー(苦笑」と制すが
二人の笑いは止まらない。廊下にいる子達が当然変な目で見てくる。
ってかなんで肩組んでるの?って感じだが、それほど
変なテンションに陥っていたのだろう。。。
電車が目的地に着いてはっとする。
降りて移動している最中も、ぼーっと0点事件を思い出す。
あの時の自分はよく笑い飛ばせたなぁ。
若干ショックだったけど、すがすがしい気持ちもあったなぁ。
「私も!」って言ってくれた友人もすがすがしいなぁ。
そんなことを思いながらトボトボ歩く。
今、0点って突き付けられたらちょっと凹むなぁ。
高校時代のキラッとする思い出が、疲れて弱った女の心に刺さる。
一方でちょっと気持ちが楽しくなる。
あの時の気持ちの良い「笑い飛ばし方」、忘れちゃったなぁ。
バカだったなぁ自分。
フフフと笑ってコンビニに立ち寄るのであった。