てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

楽しかった夏の思い出と、不器用な家族の思い出がリンクして寂しさが増す。

先週はお盆休み。

特に旅行に行くわけでもなくだらだらと過ごす中、

てつこの家に友人とその娘ちゃんが泊まりに来た。

小学生の娘ちゃん。

少し恥ずかしがり屋だが笑顔のかわいい明るい子。

てつこは2人を連れて地元や大きな駅まで案内し、レッツ観光。

有名な店のパフェを食べたり、ラテアートを頼んだり、

プリクラをとったり、お土産を買ってまわったり。

女子力高めの3日間。

 

実は、泊まりに来る少し前からてつこはとても楽しみで、

娘ちゃんの行きたい店をネットでリサーチしては地図にメモっていた。

万全な準備により、エスコートは大成功(したはず)。

娘ちゃんはママのipadで写真を撮りまくり、

とても楽しそうにはしゃいでいたので、熱が出ないが心配した。

 

昨日、その友人から改めてお礼のLINEが来た。

『本当にありがとう。ところで、てっちゃんは子どもの扱い上手いね』

意外な内容に驚くてつこ。そうかなぁ…と返すと、

『コツが知りたいよー。なんか心掛けてるの??』

と質問あり。

何分も悩んだ挙句、

「自分自身も楽しんでたから、娘ちゃんも楽しんでくれたんじゃないかなぁ」

と自信なさげに返信。すると友人は、

『なるほど。それは子どもに限らずだね。ちょっと忘れてたわ。』

とのこと。

 

静かになった部屋で一人、てつこは友人との問答を通して

ぼんやりと思い出していた。

3人であちこち行って楽しかったなぁ。

娘ちゃんも楽しかったって言ってくれたし嬉しいなぁ。

だから今一人だと寂しく感じるなぁ。

そして自分がLINEで送った言葉をまた見返す。

 

『自分自身も楽しんでたから、娘ちゃんも楽しんでくれたんじゃないかなぁ』

 

てつこは笑顔で接して、娘ちゃんも笑顔で返してくれた。

だからこんなことを思ったのだろう。

娘ちゃんを通じて、自分の昔を思い出す。

 

てつこが小学生や中学生の頃、家族旅行に度々出かけた。

夫婦仲は壊れているが、「家族」の形を重んじるてつ母の発案だった。

どこに出かけても険悪なままだった。

 

いつものてつこなら、ここまで思い出して恨めしい気持ちになる。

が、今回はちょっと違った。

てつ母とてつ父に申し訳ない気持ちがすこーし出てきた。

『(てつこが)いつもつまらなそうにムスッとしていた』ことが引っかかったのだ。

旅行先の思い出写真には、てつこのムスッとした顔がいつも映っている。

楽しくなかったから。

何をしても、何をされても、楽しくなかったし楽しもうとしなかった。

そんなてつこを笑顔にしようと、

てつ母はガイドブックやカメラや絵を書く用の色鉛筆やら、色々買い込んでいた。

でも何をしてもてつこには響かなかった。

 

あの時のてつ母の努力を思い出し、自分にも非があったかなーと思う。

そして「あぁ、なんて不器用な家族なんだろう」と笑った。

筋違いの母、車の運転しかする気のない父、そして不愛想な娘。

誰も楽しんでないんだもん、そりゃあ楽しくならないよなぁ。

 

あーあ、となんだか寂しさが増した。

友人には「また来いよ~」とLINEを送った。別れ際にも何回も言ったのに。

きっと今度来るときは娘ちゃんは大きくなっている。

っていうか、たぶん思春期になるし来ないだろう。

知らないおばちゃんとプリクラなんて撮ってくれないだろう。

 

あーあ、とまた寂しくなって溜息が出た。

まぁなんにせよ、楽しいひと時をありがとう。明日からがんばるぜよ。