てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

死によって何が償われるのか、君は考えたことがあるか。

いつもいつもいつも喧嘩をする二人

朝から晩まで、更に超えてその次の朝まで見させられるてつこ

小さいてつこに「二人ともかわいそう」という感情が芽生えていた。

 

ある朝起きて自分の部屋からリビングへ向かう。

その途中、廊下の壁紙に切れ目が何本か入っていた。

飲み物を飲もうと冷蔵庫に到着する。

するとその扉はぼこっと凹んでいた。頑丈な冷蔵庫の扉が。

その横の洗い場には

一本の包丁。

椅子も机もガタガタに動いていた。

 

「ああ、振り回したんだな。」

 

 

それから数日か数週間か、少し経った頃。

とても静かな夜だった。

不自然なくらい、静か。

当時はまだ夫婦二人並んで寝ていた。

てつこは真夜中に目が覚めて、夫婦の寝室へ向かった。

 

てつこは右手に包丁を持っていた

 

久しぶりに喧嘩をせず、二人並んで布団に寝ていた。

寝室のドアを開け、入口に立った。

妙に覚えている。

その晩は月が大きかった日なのか、窓から月光が差し込んでいた。

寝室中が青く照らされて、とてもきれいだなぁと二人を見ながら思っていた。

右手には硬くて冷たい包丁が、ひんやりとしていた。

幻想的な印象と包丁の柄の感覚。

今でも、妙に覚えている。

ぼんやりと

でも確実に

二人のため

自分のため

しねばいい

楽になるよ

 

てつこは完全にイカれていた

何秒、何分、何時間、そこに立っていたのかわからない

いや、もはや夢だったのかもしれない、現実の出来事では無かったかもしれない

妄想であってほしい

小さい子どもが肉親をころす?そんなバカな。

そもそもてつこは何を考え、何を理由に、そんなことをしようとしたのか?

死んで消えればてつこの苦しみが消えたのか?

死んで消えればてつ父の苦しみが消えたのか?

死んで消えればてつ母の苦しみが消えたのか?

小さいてつこは完全にイカれていたのだ

 

夢でも現実でも妄想でも、あの時の感触と殺意は、死ぬまで消えない傷となった。

小さいてつこは自分で自分に傷をつけた。

 

毎日繰り返されるショックな出来事と

子どもならではの浅はかさと残虐性が、

リンクしてしまった、

そんな夜。