てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

コミュニケーション不全の家で育った結果、欠けてるものと、今欲しいもの。(1)

てつこは自分の気持ちを表現するのが苦手だ。

作り笑いでやり過ごす癖があるため、良く言うといつも笑顔、

悪く言うといつもヘラヘラしている。

イラっとして顔に敢えて「え?」と出したつもりでも、

そんな風に見えなかったよ!いつも通りだね!と言われる始末。

かといって、相手に非難されたり嫌な顔をされると数日心の中でひきずる。

 

てつこは最近ようやく自分の意見を口に出せるようになったが、

肝心のところでひるんだり泣いたり笑って誤魔化したりしてしまう。

性格的なこともあるかもしれない。

けれどもやっぱり、てつ家の環境の影響は大きいと改めて思う。

 

てつ母はてつこがまだ小さい時はかなりの情緒不安定だった。

泣き喚く。罵倒する。暴れる。失神する。吐く。包丁を投げる。殴る蹴る。夜中出て階段から落ちる。ごめんなさいを連呼する。私は芸能人だと妄想?を話す。。。

てつこが小学校に上がる前後は毎日↑の組み合わせだった。

まだ素直だったてつこは、素直にてつ母を心配して声をかけたり隣に寄り添った。

 

段々とてつ母はてつこを「養育すべき子ども」として扱わなくなった。

「てつばあは私にこんな酷い仕打ちをしてきたのよ!」

「てつじいは私にこんな虐待をしてきたのよ!」

「てつ父はこんなに最低でクズな夫なの!」

「私はあなたのためにこんなに愛情をもって接してきたのよ!」

てつこは夫婦間の出来事を相談され、愚痴や本当か嘘かわからないてつ母の思い出話を聞かされた。

興味の無い素振りをすると「なんて冷たくて性格ブスな子どもなの!」と罵られた。

そして「あなたのために頑張っているのに!」と目の前で泣かれた。

てつこは大きくなるにつれ、呆れていった。

 

てつ父はずーっと何も喋ってくれなかった。

ホントにてつこが小さい時は一緒にボール遊びをしたり車で色々連れて行ってくれた。

笑顔が消え、焼酎と胃薬を交互に口にして、椅子に座ったまま寝ている父とは

もしかしたらまともな話をしたことが無いかもしれない。

てつこが大学に入った頃、てつ母がいた頃よりは話していた。

それでも時すでに遅し。

二人の間にはお互いを理解しようという気持ちもなく、スキルも無かった。

てつこは進学やてつ母のことを相談しても「うん」「そうだね」「てつこの好きでいいよ」

としか返答しないてつ父に懐疑的で、仕舞には幻滅することになった。

てつ父もてつこに対してこうして欲しい・ああした方がよい、といった

父らしい発言を遂にすることが無かった。

 

 

思い出す中でどうしても「てつ家の会話」の記憶が見つからない。

楽しい会話、ショックだった会話、普段の会話、

会話と呼べる記憶がどうしても「無い」。

喚き声や泣き声、一方的な罵倒、無視、本意ではない同意。

それどころか、てつこ自身が何か喋ったことは、何か親に相談したり報告したりしたことはあったんだろうか。

 

てつこはどうやって言葉を覚えたのか。

いつ他人に言葉を伝えることを覚えたのか。

もしかして

未だにてつこには「会話」のスキルが備わっていないのではないか。

 

今までのてつこの人生は、てつこ自身の為になっていたんだろうか??