てつこがクリスマスにプレゼントをお願いしなくなった理由。
クリスマスが好きだ。
街中が華やかになり楽しげな空気に満ちる。
その中にいるとなんとなく気持ちが大きくなり、
ちょっとこの店に寄ってみようかと少しワクワクする。
昨日てつこは普段あまり買わないショートケーキを買ってみた。
ローストレッグをスーパーで買って家で焼いてみた。
キラキラするのもたまには悪くない。
でも以前はそうでもなかった。
小さい頃のてつこはクリスマス前夜に靴下を枕元に置いて寝た。
サンタさんがプレゼントを置いてくれるのを楽しみにしていた。
朝起きておもちゃが置いてあったときは、飛び上がって喜んだ。
クリスマス当日にはケーキが登場した。
ホールケーキ。
てつ父は甘いものは食べないので、てつことてつ母で半分こ。
(・・・そう、食いすぎである。
小さいホールではなく、数人で分ける量のホール。
二人ともぶくぶく太るわけである・・・)
楽しい思い出は長く続かなかった。
てつこが小学校に上がると、夫婦喧嘩は激しくなるわ、借金取りが家に来るわ、
子どものてつこにもてつ家が良くない状況になっていることがわかった。
一方でてつ母は、自分の親であるてつばあとてつじいから援助を受け、
洋服を買い漁ったり高いディナーに家族で連れ立ったりと、
てつ家の中がめちゃくちゃになりつつあった。
その中でふと思う。
「もう、プレゼント、いらないなぁ・・・」
プレゼントを買うお金を惜しむように、てつこは枕元に靴下を置くのをやめた。
てつ母に欲しいものを聞かれても、何もないと答えた。
『物』は欲しくなかった。
てつ家から自然と「クリスマス」は無くなっていった。
↑この記事を見かけて、幼い頃のクリスマスを思い出したのだった。
街中がそういうムードになっているのを、
子どものてつこは歓迎しなかった。
てつこはおもちゃやゲームは欲しくなかった。
友人と遊ぶことを制限され、かといって親が相手してくれるわけでもなく、
そんな中で遊ぶ道具をもらっても嬉しくなかった。
もしかしたら、てつ家の経済状況への遠慮もあったかもしれない。
お金が無いのにプレゼントやケーキが与えられるのに違和感があった。
とにかくクリスマスが「必要」なかった。
サンタさんが来ない家。
てつ家もその一つだったのかなぁと今更思う。
(どちらかというと、サンタさんが来なくなった家、か。)
そんな家が無くなってほしいし、
そんな家が世の中にはあることももっと知られてほしい。
今こうやってクリスマスを楽しめるまでに成長できたてつこ自身に
安堵感を覚えつつも、そう切実に願うのだった。
残りちょっとですが、良きクリスマスを。