家族を愛しているのなら、あなたに何ができるのか。
てつ母からまた連絡が来た。
会いたい。連絡をくれ。それだけの内容だった。
てつこはてつ母からの一切の連絡に応えていない。
でもスマホの番号もメアドも昔から変えていない。
連絡手段を本当に全て絶ってしまうと、
何が起きるかわからないため。
てつこの友人や恋人に何度となく接触を試み、迷惑をかける。
時には探偵を使われ、時には会社に突撃された。
それらの出来事はてつこにとって非常に怖いものだった。
そして同時にとても恥ずかしいものだった。
もし連絡手段を絶って、てつこという「空気穴」を塞いだ時、
彼女にどんな反応が起きるのか、
娘であるてつこにも予期できない。
でも多分、てつこにとってマイナスでしかないだろう。
だから番号もメアドも変えない。
てつ母から連絡が来るたびに、
会いたいと言われるたびに、
昔の実家のトイレを思い出す。
いつからかわからないが、小さいてつこはふと気付いた。
トイレの壁の、壁紙がちょっと剥がれたところに、
I Love Family
と小さい文字で書かれていた。
明らかに、てつ母が書いたものだった。
ゾ
ッ
と
し
た。
気味が悪かった。
呪いの言葉のように思えた。
当時のてつ家は荒廃し、会話もなく、金もなく、愛もなかった。
そんな環境で『家族を愛しています』???
意味が分からない。
誰が家族を壊したのか。
それを彼女はわかっているのか。
てつ母は、ずっと『家族』が欲しかったのだろう。
てつ母は、ずっと誰かに愛されたかったのだろう。
でも貪欲で強欲な彼女について行ける人なんていない。
彼女がいつか自分の過ちに気付き、自らを正さない限り、いない。
自ら、娘も夫も親も友人も遠ざけたことに気付かない限り、無理だ。
なぁ母よ、あなたには新しい家族がいる。
なぜ、新しい家族を大切にしない?
色々と上手くいっていないのは知っている。
けれども、今の道はあなたが選んだ道だ。
あなたは私の倍生きているのだ。そんなこともわからないのか。
なぁ母よ、私はもう大人だ。
仕事を持ち、生活費を稼ぎ、少ない友人と楽しく生活している。
そして自分の生き方に責任を感じている。
それが、何故あなたは出来ないのか。
何故あなたは私をまだ娘として扱おうとするのか。
なぁ母よ、
もういい加減
子離れしてくれないか。
もう疲れたよ。