てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

常日頃の緊張感と疲労感はフツーじゃないと知った衝撃

てつこは常にだるい。だるい故のジト目か。それはさておき。

平日会社では必要以上に仕事を引き受けバタバタしている。

休日は掃除やら料理やらでバタバタしている。

毎晩、翌日やること・やりたいことを頭の中で整理しては脳みそが疲れて眠る。しかし中途覚醒してしまう。

 

人間はいつも疲れている。

それが普通だと思っていた。

 

だが、先日カウンセリングの先生に指摘されててつこの心が震えた。

「平日もフルで働いて土日もそんなんじゃ、そりゃ疲れるわよ?」

 

・・・で、ですよねー。

 

でも、てつこは何かしていないと余計な考えがぐるぐると頭を回る癖がある。

てつ父は今生きているんだろうか。

てつ母からまた会社や友人に突撃されないだろうか。

今日仕事であの人に嫌な思いをさせてしまったので反省しなければ。

明日の休みはここを掃除してあれを買ってあそこに行って。

大きなことから小さなことまで、常に頭がフル回転しているのだ。

先生、でも何かやってないと気が済まないんです。

 

「それは常に不安だから、ですね?」

 

・・・そ、そうです。

 

「あなたは安定すべき子ども時代に不安定な環境にいた。

 だから今でも不安感が消えない。」

 

今までの生い立ちを考えれば至極当然のことだが、てつこは指摘されるまで意識していなかった。本当に。自ら愚痴っていたくせに。

子どもの頃、常に緊張していた。

てつ母の金切り声、物の壊れる音、てつ父が蹴られる音、涙声、叫び声、痛いとうめく声、てつ父の会社からの電話、夫婦喧嘩の末やってくるパトカー、、、。

いつか何かが誰かが自分がどうにかなっちゃうのでは、と常に緊張していた。

あぁやっぱりあれは普通じゃなかったんだ。

あの情景から数十年経った。

 

誰かに認めてほしかったんだ。ずっと。

 

あなたは「かわいそうな子」と誰かに言ってほしかった。

 

そして「大変だったね」と気遣ってほしかった。

 

 

今ようやくカウンセリングという形で実現した。

 

今週も仕事で頑張り過ぎてしまった。また余計な仕事を引き受けてしまった。昼の休憩時間を削ってしまった。飲み会に顔を出してしまった。残業して帰宅した後も掃除洗濯して、自分の時間を作らなった。

大いに反省。

 

昔のような緊張感はもうない。

けれども子どもの頃から積み重なった疲れ。

大人になって自ら作り出している疲れ。

疲れの正体がわかったことで安心した。この2つを少しずつ癒していけばいいんだ。

そう思って今日はだらだらごろごろしています。

ヘタレの上司に需要はあるのか?

・・・掲題の件につきまして

・・・結論として

 

需要は無い!

 

というのが世間の本音。そしててつこの本音。

 

 

仕事をする。

その上での目標や夢って何だろう?

それともこの歳で‘夢’なんて言うのは恥ずかしことなんだろうか?

ともかく漫画やドラマみたいに

「(仕事をしていて)わたしは何を将来したいんだろう?」

「(仕事をしていて)わたしはなんでこんなに頑張っているんだろう?」

と思う。最近。

 

そう思うことって、よくあることなのだろうか。

そう思うことを、実はちょっと恥ずかしいとてつこは思っていた。

自分は出来る人、と思っている自意識過剰感がなんだかあるような気がして。

 

皆悩んでいる。皆頑張っている。

だから自分がそう悩むことが恥ずかしい。と、思ってしまうのだ。

 

てつこは運よく幸いにも、昇格に向けての幸先の良い話をいただいた。

実際に昇格するのはまだまだ先の話である。

だがそれでも、てつこは喜んだ。

会社を辞めなくてよかった、何より自分は頑張った、その思いが込み上げた。

てつ父とてつ母とは違う、そんな優越感すら覚えた。

一方で、またいつもの邪念が邪魔をする。

「その歳なら当たり前のターニングポイントよ」

「何より、メンタル弱いお前が上に立つなんて、できるのかしら?」

そんな心の声が聞こえてくる。

 

てつこはメンタルが弱い。

嫌なことがあるすぐ泣く。クレーム対応が苦手。咄嗟の判断が苦手。

そんな上司がいたら、誰だって嫌だろう。てつこだってそんな奴は嫌だ。

なのに、そんなてつこが、いつかは上席に???

 

てつこみたいなメンタルが弱い人間って何か世の役に立てるのだろうか?

 

この世の終わりみたいな考えがてつこの頭をぐるぐる回る。

自嘲癖に輪をかけてこじれた自信の無さ。自尊心の無さ。

普段は自信が多少あるくせに、いざという時におびえてしまうビビり癖。

 

てつこはメンタルが弱い、それは紛れもない事実。

それでもそんなてつこに、何かできることがあるのか。今できていることは何なのか。

 

人の弱さ。

それを知っている上司は、誰かいりませんか?

話を聞くよ。悩みを聞くよ。飲みに行くよ。毒親対策アドバイスできるよ。仕事の覚えは速いよ。気配りできるよ。クレーム受けても粘って頑張って解決するよ。その後は疲れちゃうから残業しないで率先して早帰りするよ。

パーフェクトではない人間。

見た目は普通だけど、中身は一部欠けている人間。

メンタル弱いけど、今まで頑張って生きてきた人間。

そんな味わい深い人間は必要ありませんか?

 

どうか、これから先、そんな人間を必要としてくれる人や部署に恵まれますように。

今のてつこにはただただ祈り頑張るしか、ない。

黒いワンピースと失われたファッションセンス

衣替えをしていると、てつ家から持ってきたTシャツや短パンが出てきた。

もう10年以上前のもの。だが何着も同じものを買うてつ母のおかげでまだ未使用だ。

勿体なくて、てつ家を出るときに少し持ってきたのだ。

 

てつ母は良いと思った物を何個も何着も買い込む人だった。

ただ、元々てつ母とてつこの好きな洋服の系統は違う。てつ母はフリフリヒラヒラキラキラ、てつこはシンプルな機能性重視、であった。

てつこは一時期、必要以上にシンプルな格好に徹した時があったけれども。

jitomenotetsuko.hatenablog.com

色々と要因はあるけれど、元来てつこはシンプル派だった。

当時から(今も)ユニクロが好きだった。

小学校高学年になり、家族で洋服を見に行く時にリクエストしたのはユニクロだった。

あそこなら安くてカラフルな服がたくさんある。

フリフリでお高い洋服好きなてつ母はいつも不満げだった。

 

てつこが中学生になったある日、家族で大型スーパーへやってきた。

洋服ゾーンもある大きな店。ファッションに興味の出てきたてつこは、自分で服を選びたい年頃になっていた。

しかし相変わらずてつ母はフリフリを買い込み、着せてくる。

反抗しても負けてしまうてつこは諦めモードだったが、やはり思春期になり人の目が気になりだした。そして服くらい自分で選んで着たいという気持ちが高まった。

 

てつ「あのぅ…あそこの服売り場見に行っていい?」

恐る恐るてつ母に切り出す。

て母「あら?いいわよ♪(自分の物を選んでる)」

 

てつこがぐるぐると洋服売り場を見て、選んだのは黒いワンピース。

ひざ丈で特に装飾も刺繍もない、ちょっとスポーティな真っ黒なワンピース。

1000円しないくらいだったか。

値段もこれくらいならいいか、何よりかわいい…!!!とてつこは気に入ったのだ。

 

てつ「ねぇ……これ…欲しい」

また恐る恐るてつ母に切り出す。

て母「……

   なにこれ。かわいくない服ね。」

 

てつ母は大したことないと判断してか、自分の雑貨や服を手に持って会計に並びに行ってしまった。

ぽかーんとするてつこ。半泣きで元の売り場に戻した。

 

実はこれで終わらない。

翌週も運よく同じスーパーに出かけたのだ。そして運よくまだ売れ残っていた。

てつこはあの後、家で毎晩毎晩あのワンピースが欲しいと思っていた。

このチャンス、逃してなるものか…!

てつ「これ…買って」

て母「…はぁ?また?そんなにこれ、気に入ったの?」

てつ「う、うん…(てつ母怖すぎ笑えない)」

て母「こんな黒くてかわいくないの~(以下略、暫く続く)~

   仕方ないね、カゴに入れな」

 

勝った…!買った…!

この時の喜びと勝ち取った感を今でも忘れない。

ただ、同時に疲れも覚えた。

服一枚買うのにこんなにも戦わないといけないのか…そう思うと脱力してしまった。

 

この黒いワンピースは暫くてつこのお出かけ着として活躍した。

てつ母が買う洋服に出番は押され気味だったが。

 

結局家族で出かけて洋服を親に買ってもらったのはこの時くらいだった。

その後は『自分はブスだと言われる上に、服のセンスも無いのか』と完全に自信を無くしたのだった。

てつこは今思う、ファッションセンスって自分の興味やポリシーがあるからこそ磨かれるもの。興味が無いといつまでたっても育たない。

『自分を良く見せよう』

と思う気持ちは、他人の目、そして自分自身を大切にしているからこそ出てくるものだろう。

ちょっとオーバーかもしれないが、あの時「この黒いワンピース、かわいいね!」と言ってくれたのなら、てつこの心に良い影響があったはずだ。

それができないのが、残念ながらてつ母だった。

お弁当からにじみ出る思春期女子の憂鬱

今週のお題「お弁当」

 

「お弁当」の文字を見て、てつこは学生時代を思い出した。

確かあれは中学の頃、ゆみちゃんという女子がクラスにいた。

若干どころか結構浮いている子であった。

いつも口をぽかーんと開けてぼんやりと外を見ていた。

他人とあまり交わるのが得意じゃなく、一人で外を見ていた。

時々話しかけると「授業つまんない」「こんなのやりたくない」「暑い」「寒い」「めんどくさい」…等々、文句が怒涛のように出てくるので逆におもしろかった。

 

てつこが当時気になったことがある。

ゆみちゃんはよく家族への文句をよく言っていた。

「お母さんがこれを持っていけっていったから、邪魔なのに」「お姉ちゃんがテレビ見るのを邪魔をする」「お父さん気持ち悪い」…等々。

極めつけは、彼女のお弁当の2つあるおにぎりの内、1つを必ず残すこと。

理由をたずねると

「お母さんが持っていけっていうから持ってきた。けどいらない。」

「こんなのお腹いっぱいで食べられない」

とのこと。

てつこから見ても、確かにしっかりとしたサイズのおにぎりだった。

ゆみちゃんはかなりの痩せ型だったので、食が細くて余計に食べられないのであろう。

 

おにぎりを必ず残すゆみちゃんとは対照的に、

一緒に食べていたりえちゃん(背の順で一番後ろになるタイプ)は男子用かと見まごうばかりの立派な弁当を完食していた。

ただ、食べながら必ず「やだ~、太っちゃう」とぼやくのがお約束。

そして「おにぎり勿体ないから、あんた食べなさいよ」とゆみちゃんを諭すのであった。

 

中学高校の女子のお昼は、OLの見栄トーク大会のお昼なんかよりずっとおもしろい。

太るからといってお弁当を残す女子、

けどこっそりパンを買って食べてるのがバレてからかわれる女子、

食べないと死んじゃうと言いながらガチで食べ盛る女子、

部活の昼練のために秒で食べ終わる女子、

男子のように午前中にお弁当を食べちゃって友人から恵んでもらう女子、

いらないおかずを迷惑なおせっかいで友人に分け与える女子、

普段元気なのにお弁当を見られたくなくてお昼時間は一人どこかに行っちゃう女子、

色んな子がいて楽しかった。

 

当のてつこは、てつ父が作ってくれた弁当を食べていた。

手先の器用なてつ父は仕事帰りで疲れていても、ちゃちゃっと作ってくれた。

冷凍食品ばかりだったけど、シソの葉やわさびシートをお弁当につめて痛まないよう工夫してくれた一品だった。

実はてつこも体重を気にして、かなり小さいお弁当箱だった。

てつ父はよく「足りるのか?」と心配した。

大丈夫と笑っていたが、本当は足りなかった。けど、これ以上てつ父に負担をかけたくなくて小さなお弁当で我慢してしまった。

作ってくれるだけで良かった。感謝していた。

 

だからこそ、ゆみちゃんが文句をぶつぶつ言っておにぎりをわざと残すことが、当時のてつこには信じられなかった。

勿体ないじゃないか。

りえちゃん同様、食べなさいよ~とてつこも注意したものだ。

それでも彼女はアルミホイルを開けようともしなかった。

 

大人になった今思う。ゆみちゃんはおにぎりを残すことでお母さんに反抗していたのかもしれない。

きっと家に帰って、わざとおにぎり残したことを見せてるんだろうな。

毎日その攻防が繰り広げられたとなると、ゆみちゃんも母親も相当頑固者だ。

 

今のてつこは会社のお昼時間、追われるようにぱぱっと食べている。

学生時代は色んな情景があの「時間」の「お弁当」に詰まっていたんだなぁと思うと、

なんだかしみじみして一曲歌ってしまいそうである。

会社の研修で、生い立ち語るのやめません?

ここ数日リクルートスーツの若い人が多いなぁと思っていたら、

そうか内定式だったのか、とてつこは合点がいった。

 

以前から思っていたが、新人研修やら節目の研修やらで

自分の生い立ちを振り返らせたり家族を語らせたりするやつ、勘弁してほしい。

てつこが今まで受けた研修では結構そういうことがある。

 

ある研修で、自分の生い立ちを0歳から当時の歳までをグラフ化して発表しなければならないことがあった。

てつこの幼少~高校時代なんて暗黒期。

高校時代に両親が離婚して、大学卒業時には両親と絶縁。

ようやく一人の人間として生きてきたばかりなのに、何を懐かしく語れと言うのか?

嘘で誤魔化しても仕方ないと思い、やんわりと正直にグラフを書いた。

ずーっと低迷していて親の離婚辺りから上向きになるグラフ。

そしてみんなの前で発表。

 

講師「はい、では次はてつこさんでーす!」

てつ「・・・はい。

   えーっと・・・、子どもの頃はいいことなくてずっと暗黒時代でした」

(みんな笑う)

(↑たぶん言い方が突拍子もなかったので笑ったと思われる)

てつ「で、えーと・・・

   高校の時色々あって家がなくなりまして、別れたとゆーか。」

(しーん)

てつ「で、色々あってこの会社に入社して・・・がんばってます!」

講師「(なんかやべぇ奴出てきちゃったなという気まずい顔)

   ・・・あ、ありがとうございました!」

パチ…パチパチパチ…

(タイミングのずれた拍手)

 

離婚した、ってだけで完全アウェイ。

 

そんなんでどうやって、てつこの生い立ちを受け止めてくれるのか。

幸せな家庭の話しか想定してないんなら、最初からそう言えやバーロー。

結構傷ついたぜ、バーロー。

 

この時の講師の表情をよく覚えている。

発表時の戸惑うてつこの目を見て、「あっ」と何かに気付いた表情をしていた。

研修の休憩中に、辛いことを言ってくれてありがとうと声をかけられた。

感謝されるようなことではないんだが。

何人も見てきてるんだろうから、てつこ以外にも似た境遇の人はいるであろうに。

 

今の学校生活にも「二分の一成人式」というやっかいなイベントがあるらしい。

てつこが子どもの時にも、家族に感謝する的な作文や授業参観はあったし、今でもあるのだろう。

 

そういうの、やめませんか?

 

家族に感謝する、親を尊ぶ、それは真っ当な教育であり自然なこと。

でも「幸せな家庭が普通なんです。そうでないといけないんです。」と決めつけて

イベントに仕立て上げて皆に強制参加させるのって、

参加させられた一部の不幸者たちはどんな顔をしていれば良いのやら。

そもそも『私の家は幸せなおうちです!』って心から言える人っているのかな。

そんなに皆理想を追い求めないで、淡々と家族を話せばいいじゃないですか。

 

みんな色々抱えてる。

抱えていることを吐き出して、解決して、成長したいなら、

もっと素直に等身大でやればいいじゃない。

 

てつこはリクルートスーツを見ながらそんなことを思った。

若者よ、変で面倒でおかしな研修に参加させられても、やり過ごすんだよ。

てつこは一人で生きていく。その心は…私にりょうしんはありません。

今週のお題「読書の秋」

てつこは本を読むのが苦手だ。どうにも集中できない。かと言って、電車の中やちょっとした休憩時間で読む、なんてこともできない。

それでも読みたいと思って買ったのが、

マーサ・スタウトの「良心をもたない人たち」(草思社文庫)。

 

猟奇殺人犯なんかをサイコパスと呼ぶけれども、実はもっともっと身近にいて、

尚且つ社会に溶け込むタイプのサイコパスが25人に1人いるんだ!という本らしい。

 

そんな過激な本になぜ惹かれたのか。

 

他ならぬ、てつこの家の登場人物が「そんな感じ」だから。

 

てつ母は平気で嘘をつく人だ。

その嘘は「私は癌だが娘のために自宅療養している」という美談から、

「私は〇〇というドラマのゴーストライターなの」というトンデモ話まで多岐に渡る。

その嘘を例えば娘のてつこが「それって嘘でしょ?」と聞くと見事なまでに逆切れする。そして「娘のお前が母をバカにするのか!」と感情論で責め立てる。

てつ母の中で真実は一つ。

自分がこうだと思うこと。

ただそれだけで‘真実’となり得るのだ。

 

てつ母という女性を間近で見てきて、ただの嘘つきやメンヘラなどとは違う点がある。

この本の通り「良心がない」ところ。

てつ母はてつこに対し「てつ父とこんなに仲が悪くなってしまったのは、私にも悪い所があったのよ」と泣きながら訴える。

その一方で、てつ父には容赦なく蹴りを入れ身体的暴力を行う。てつこの目の前で。

言っていることとやっていることの辻褄が合わないのだ。

それでも彼女は悪びれない。

社会の善悪とかマナーとか相手の立場とかは関係ない。

あくまでも彼女自身が基準。

 

そこがすごく怖い。

話ができない。会話にならない。だから怖い。

てつことてつ母に共通する価値観が一切無い。だから分かり合えない。

そこがただの嘘つきやメンヘラとは違う。

心を病んでいても「こんなことしたら他の人の迷惑になるかな」「見られたら恥ずかしいな」「こんなことバレるよな」って多少は思うもの。

そういった他者の目・社会の目がてつ母には無かった。

 

怖いことに、てつ父も「彼自身が基準」という面が強かった。

てつ父は気分によって、出社したり無断欠勤したり、てつこと会話したり無視したり、

てつ母にプレゼントをしたりケガをしても救急車すら呼ばなかったり・・・と、

ころころと対応を変えた。

そこに良心は無かった。

 

てつこは自分の両親がサイコパスだ!なんて言いたくはない。

けれども過去この目で見てきたてつ家の日常と、その中で育った自分自身のこと。

てつこの中にある、社会や人間関係に対する冷めた心と、

両親に対する憎しみや悲しみなどの複雑な心。

それらを客観的に捉え直すためにこの本を読みたい。

 

そう思って大分前に買ったが、ちょっと怖くて開けない。

色々な思いが込み上げて冷静に読めないかもしれない。

けれどもこれをきちんと読み終わったとき、

てつこ自身の生き方のヒントになるのでは・・・と勝手に大きな期待をしている。

「置いてけぼり」にされることへの異常な恐怖感

以前、山で置いてけぼりにされた子どものニュースがあった。

言うことを聞かなかったため一瞬の躾だったのか、真意はわからないが両親に山の中で一人にされて、親がその場に戻ってきたときにはその子は行方不明。

数日後無事発見された、というもの。

 

そのニュースを見た時、嫌なことを思い出した。

 

てつ父は家族で出かけるとフラフラと一人でどこかに行ってしまう癖があった。

とある観光地へ家族で車で出かけた際、てつ母とてつこで先を歩いていた。

てつこがふと後ろを向く。

…いるはずのてつ父がいない。

近くを探すが、いない。

いつもなら10~20分探せばひょいっと出てくるのに、今回は違う。見つからない。

みるみるてつ母の顔が般若のように怒りに満ちていった。

てつこはてつ母の怒りが怖かったのと、何より「家に帰れないのでは」と心配になった。

車を運転できるのはてつ父しかいない、当時携帯電話なんかない。連絡取れない。

見知らぬ観光地で、てつことてつ母は1時間以上も途方にくれた。

結局、ひょいっとてつ父は目の前に現れたんだけれども。

 

似たようなことは数回あった。

その度にてつこは『見捨てられたのではないか』という悲しさと怖さで泣いた。

数回体験しても慣れない、あの不安感。

 

とにかくてつこは何でも「置いてけぼり」にされることが、とても怖い。

周りの人が自分以外とヒソヒソ話していると気になる。

てつこが知らない話題が出てくると、仲間外れにされた気がする。

このくらいで済めばいいのだが、以前の恋人さんとの関係性にも「それ」は現れた。

恋人さんはてつこも好きだが、ギャンブルも好きだった。

朝起きると恋人さんは「ちょっとコンビニ行く」と言っては夜まで帰ってこない。

そう、嘘をついて大好きなギャンブルに行くのであった。家に置いてあるお金を持って。

てつこは泣いて止めたが、それでも行ってしまう。

…てつこはギャンブル自体はどうでもよかった。

ただただ、自分を置いて出て行ってしまう、しかも嘘をついてまで行ってしまう恋人さんのことが嫌で悲しかった。

一人家に残され、一日中泣いていた。

 

てつこは「あ、今、自分は置いてけぼりをくらっている」と認識すると途端に「悲しみスイッチ」がONになる仕組みのようだ。

 

一人が嫌なんじゃない

話題に乗り遅れることが嫌なんじゃない

お金を持ち逃げされることが嫌なんじゃない

とにかく、てつこのことをスルーされてしまうことが嫌で不安でたまらない。

いわゆるこれが『見捨てられ不安』というやつか。

 

死ぬまで側にいて都合よく話し相手になってくれて絶対に裏切らない、そんな忠実で頼りになるロボットが発売されたらいいのになぁ。