てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

中学受験で広がった世界と閉じた世界

てつこは中学受験を受けたことがある。

偏差値の高い学校へ行って欲しいという、てつ母たっての希望だった。

小学校4年生ごろから塾通いを始め毎日勉強した。

正直てつこは遊びたかった。

けれども地元の友人と遊ぶことを元々許されていなかったし、

遊ぶことで怒られるくらいなら家にいる方がましだと思って、

段々と受験勉強に集中するようになった。

(でも勉強してるフリして絵を書いたり本を読んだりしてたけどね)

 

当時の小学校にも数人だが中学受験組がいた。

頭が良いけどちょっと挙動不審な、じゅん君。

なんでも自慢する癖がある一方ですぐ泣く弱虫の、けいた君。

英語が読めて賢くてきりっとした目鼻立ちの、のりちゃん。

人の物を盗む癖があってバレて学校に来なくなっちゃった、もっちゃん。

 

じゅん君やのりちゃんは志望校に行けたらしいと聞いた。

もっちゃんは希望が叶わなかったらしいと聞いた。

当時のクラスには、どういうルートか、中学受験組の情報が流れていた。

なんだか怖いなぁと当時のてつこは思っていた。

 

当のてつこは志望校に決まった。

てつこは喜びよりも、もう勉強しなくて済む、

もう重苦しいてつ家に閉じこもらなくて済む、と思い内心ほっとしていた。

 

中学受験をして地元から離れたことで友人達との縁が切れてしまった。

中学1年生くらいまでは交流があったものの、

少しずつ薄れてその内完全に途絶えてしまった。

地元のお祭りやイベントにも参加することはなくなった。

 

やっぱり、小学校6年間を一緒に遊んで勉強して楽しんだ仲間たちは格別だ。

大人びてくる中学・高校とは違う。

休み時間はドッチボールをして、流行りの音楽を教室のラジカセで流して、

オススメの漫画を貸し借りして、何かと男子vs女子でわいわい騒いで、

何事にも純粋で全力だった。

嫌なことや悲しいこともあったけど、

子ども時代の思い出の大半は小学校での出来事だ。

だから中学という早い段階で地元を離れたことを、ちょっと後悔している。

 

一方で、受験をして良かったと思うこともある。

それは『世界が広がった』こと。

中学へは電車とバスを乗り継いで通った。

子どもの内に交通機関に慣れたことで、外に出ることをためらわなくなった。

様々な地域から色々な家庭環境の子が通学している点もプラスだった。

良くも悪くも毎日がカルチャーショックだった。

 

てつこが「自分の家がおかしい」と確信するようになったのも中学時代だった。

同時に、学校行事に参加したり放課後学校の近くで遊んだりすることで

『自分だけの時間』を持てるようになった。

てつ母に介入されたり、てつ父を心配したりする時間が少なくなったのだ。

これはてつこにとって大きなプラスだった。

 

「受験」、とりわけ中学・高校・大学の受験となると

人生への影響がとても大きい。

特にまだ人生経験の浅い成長段階で岐路に立たされるわけだから、

当人の負担は計り知れない。

それが自分の意志なのか、親の意志なのかによっても度合いが異なる。

こんなにも複雑で大変なライフイベントを今この歳で振り返ると、

「あぁ、自分はよくやってきたな」

と素直に思える。

てつこの中学受験はいいことも悪いこともあった。

でもそれを経て今の自分がある。

当時はなんでこんなことしなきゃいけないんだろうなぁと思っていたけど、

決して無駄な経験ではなかった。

 

  あの頃、必死で勉強して寂しい思いをしたてつこへ。

    よく頑張った。そして、ありがとう。

 

 

今週のお題「受験」