てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

夢に生きる毒母と、夢にうなされる毒娘。

最近また、てつ母からメールが届くようになった。

てつこは一切返信していないのに、よくもまぁ送ってくるもんだ。

元気ですか?幸せですか?という問いかけやら、

なぜこんなに無視するのですかという恨みつらみ、

てつこが小さかった頃の昔話等々。

数年前に電話で直接話し合って決裂して

絶縁宣言したことをきれいさっぱり忘れているようである。

それとも忘れたふりなのか。

いずれにせよ鬱陶しいものである。

メアドと電話番号を変えようにも、

以前探偵を使われて友人や彼氏の家を特定して突撃してきたものだから

なんだか怖い。

例えるなら『毒母』という風船を針でつついてしまうような感じ。

風船の中にはもしかしたら粉が入っていて、

ばーん!と割れた瞬間に飛び散るかもしれない・・・みたいな怖さ。

 

ちょいちょい来るメールを見ながら、

何故この人はずーっと夢を見ているのだろう?と思う。

ずっとずっと自分に都合の良い夢ばかり見ていて起きようとしない。

でもあくまで夢だから現実ではない。

そのことに気付いているのだろうか??

満足できない・幸せになれないのは追い求めるしかしてないからだよ、

と直接言ってやりたい。

 

一方でてつこは悪夢にうなされている。

困ったことに、最近また寝つきが悪い。特に休日。

次の日休みだー!よっしゃ寝るぞ!と思うのに、

夜中の2時3時に悪夢を見て飛び起きる。汗だらだら。

クーラーの効きが悪いとよく見てしまう。

だから温度を下げるのだけど、寒すぎて二度寝できない…なんてことも。

 

悪夢もそうだし、てつこは夢が怖い。

自分に都合のよい夢を見たとしても、それが思い通りに実現できなかった時に

心が傷付くことがとても怖い。

 

就寝中の夢はコントロールできるとよく見聞きする。

悪夢の最中に自分の意志で目を覚ましたり、

見たい夢を見たりできるという。練習がいるようだけれど。

その技を習得したいなぁと思いwebで読んだりしたが

結局未だに会得できていない。残念。。。

 

多分、てつこはてつ母が少しうらやましい。

夢に生きて夢を追い求め続けるてつ母のように生きてみたいと思う。

そして多分、てつ母もてつこがうらやましい。

自立して好きに生きるという夢を実現したてつこが、きっとうらやましい。

 

どっちの生き方も極端すぎてよろしくない。

だからバランスよく夢見がちになって、

たまに悪夢を見ることで自己抑制する。

夢は脳が記憶を整理するための作業だという。

これをしないと記憶という情報でパンパンになってしまうらしい。

ってことは、悪夢を見ているてつこの脳は、

なんとか悪い記憶を出そうとしてくれているのだろうか。

ちょっとは我慢するから、どうか消し去ってほしい。

・・・でもやっぱり悪夢は嫌だなぁ。

今夜はぐっすり寝たい。

 

そしてどうか、てつ母の夢も覚めてほしい。

彼女の人生を歩んではくれまいか。

「ワクワク感半端ないぜ!」状態に陥りたい。

最近、ワクワクが足りてないことに気付いた。

今日は友人と(また)酒を飲みに行ったのだが、

いつもと趣向を変えてフードフェス的なお祭りに行ってきた。

そこでビールやら肉やらを楽しんできた。

昨日の仕事帰りにそのお祭りの開催を知り、

内心ちょっとワクワクしていた。

他にもかわいらしい雑貨やさんを見つけて立ち寄ったりして、

久々に「外出したなぁ」という一日になった。

 

ビールを飲みながらテンションが上がる自分がいる。

そしてワクワクが当たり、実際の楽しさに変わる。

そういえば最近この感じを味わっていなかった。

まだだ。

まだ足りない。

今日はワクワク(小)くらいだった。

もうすこし、ワクワク(中)レベルが欲しい。

なんかこう、心が躍るというか、ドキドキするというか、

楽しみ過ぎて緊張して軽くオエッってなる感じ。

わかるかなぁ、わかんねぇだろうなぁ。@松鶴家千とせ

 

少し前は仕事でワクワクしていた。

新しい場所で新しい業務。

それが段々と満足感がちょっと出てきてしまった。

希望の部署に行けた達成感的な満足。

あーよくないなぁと思いつつ、そこから逃れられない。

だったら休日にどこかに行ったり仕事帰りに何か始めたりするのが

良いのかもしれないが一歩を踏み出せない。

だらだらと毎日が過ぎる。

 

とにかくワクワクしたいのである。

統合失調症の時や、その前後の鬱々としていた日々の時は

そんな欲望はわかなかった。だから良い兆候なのかもしれない。

そう、欲だ。

心の余裕ができて、楽しいことしたい!という欲求が出てきた。

でも何をすればいいかわからない。

 

今日、一緒に飲んだ友人と海外旅行の話をした。

身体が動くうちに一度は行った方がいいと考える友人と、

飛行機に何時間も乗ってまで行って楽しいか?と考えるてつこ。

(てつこは一度も海外に行ったことがない)

(かといって友人もハワイしか行ったことない)

海外旅行行こうよ・いや行かないよという押し問答を経て、

とりあえず「旅行をしたい」という結論?に至った。

 

これもワクワクの欠乏から生まれた欲だろう。

旅行欲。

遠くへ行きたい。

仕事に疲れた夜や出社前の朝によく思うこと。

電車に乗ってこのままどこかへ・・・とてつこはよく考えている。

(あれ?これは旅行ではなく、逃避だな・・・)

 

とにかくワクワクしたいのである。2回目。

てつこは毎日毎日「今日は何食べようかな?」という

超素朴なワクワクを重ねている。それは社員食堂であろうと、

仕事帰りの花金であろうと、常に考えている。

これって意外と楽しい。

だからこれからも食に対するワクワクはなくさないようにしたい。

(たまにはラグジュアリーなホテルのフレンチを食べに行くような、

 ワクワク(大)レベルも自分自身に体験させてあげたい・・・)

 

あまり焦らず探そうかな。

ワクワクの大・中・小を定期的にイイ感じに重ねることで

楽しい生活になるだろう。

ワクワクの中身が上手くいけばいいけれど、

それを考えているとなかなか踏み出せない。

だからとりあえずワクワク感だけ楽しめればよい。

人生に潤いが欲しい、なんて言う人が世の中にはいるらしいが

まさにこんな状態のことなのだろう。

あぁ、ワクワクスパイスどこかに売ってないかなあ。

酔っぱらったので、生きづらさって何だろうって考えたら気持ちが沈んだので今日は寝よう。

今夜は酒のつまみを手作りし、久々に家で飲んだ。

ここ数日仕事で帰りが遅く、弁当や外食続きだった。

だらだらと飲んでいるうちに良い気分になった。

酒で幾度も失敗しているくせにやめられない。

そんなに嫌なことでもあるのかなぁと自分自身に問うてみる。

 

もうすぐ夏休み明けらしく、ネットやテレビでは

学校に行きたくない人向けに無理しなくていいんだよと

アナウンスが盛んに行われている。

てつこは「そういうこと言ってくれる立場の人がいるんだなぁ」と感心する。

世の中にはいろんな人がいる。

学校は行かないといけない所だと考える人。

無理して行くほどのこともないと考える人。

学校での教育そのものがいらないと言う人。などなど。

飲みながらネットを見て、自分自身はどうだったかなと考える。

別に学校は嫌ではなかった。

むしろ学校に救われた。

家にいるのが嫌で、学校に1分でも1秒でも長くいたかった。

授業が終わり、部活が終わり、友人との別れ際、

「今日もあの家に帰るのか・・・」と毎日落胆した。

 

かといって、学校に心地よさを感じていたかというとそうでもない。

ただひたすら嫌いな親から逃げていた。

頑張って友人と話を合わせ、この学校が楽しいと思いこむことで、

居場所を作り上げた。無理をしてしまった反動は大学時代に来た。

人と付き合うことが怖くなり、自分自身を信じられなくなった。

今思えば、そんなに頑張らなくてよかったのだな。

 

でも居場所があっただけてつこは恵まれている。

そして、居場所を自ら作ったてつこは偉かった。

なのに満足はしていない。

貪欲なのか、贅沢なのか。

 

ずーっとつきまとう「ここじゃない」感。

ずーっとつきまとう「居心地が悪い」感。

 

これが生きづらさなのか。

 

先日とあるファミレスで夕飯を食べていた。

目の前の広い席で、中学生くらいの女の子たちが楽しそうに喋っていた。

むかーし昔のてつこにも、そんな楽しそうな時期があった。

でも、話題や盛り上がりについていくのに必死だった。

そんなことを思い出し、独り身の今と変わらないなぁと思う。

やっぱり性格や性質は年をとってもなかなか変わらない。

人と合わせることにとても疲れる。

他人が苦手だ。

そのくせ、自分のこともキライ。

どないせいっちゅーねん。

 

これも生きづらさ??

 

居場所がない・安心感がない・自尊心がない。

ないない尽くしで生きていることが、生きづらさなのかもしれない。

そんな中で楽しげに生きていけと言われても無理ゲーだ。

その無理ゲーをひっくり返すには、

どれか一つをとりあえず見つけるしかないのかなぁ。

 

・・・あれ?

さっきまでブラタモリを見ながら楽しく飲んでいたのに、

目頭が熱くなってきたよ??

 

てつこは自分のことで精一杯だ。

己の心のぽっかり空いている穴を埋めることに必死だ。

それでも他人のことを考えるのならば、

学校が嫌で何もかもが嫌で自殺を選ぶ子どもがいない世の中になってほしい。

心が痛むニュースはお腹いっぱいである。

 

もう今日は寝よう。明日楽しいひと時が訪れることを願って、寝よう。

楽しかった夏の思い出と、不器用な家族の思い出がリンクして寂しさが増す。

先週はお盆休み。

特に旅行に行くわけでもなくだらだらと過ごす中、

てつこの家に友人とその娘ちゃんが泊まりに来た。

小学生の娘ちゃん。

少し恥ずかしがり屋だが笑顔のかわいい明るい子。

てつこは2人を連れて地元や大きな駅まで案内し、レッツ観光。

有名な店のパフェを食べたり、ラテアートを頼んだり、

プリクラをとったり、お土産を買ってまわったり。

女子力高めの3日間。

 

実は、泊まりに来る少し前からてつこはとても楽しみで、

娘ちゃんの行きたい店をネットでリサーチしては地図にメモっていた。

万全な準備により、エスコートは大成功(したはず)。

娘ちゃんはママのipadで写真を撮りまくり、

とても楽しそうにはしゃいでいたので、熱が出ないが心配した。

 

昨日、その友人から改めてお礼のLINEが来た。

『本当にありがとう。ところで、てっちゃんは子どもの扱い上手いね』

意外な内容に驚くてつこ。そうかなぁ…と返すと、

『コツが知りたいよー。なんか心掛けてるの??』

と質問あり。

何分も悩んだ挙句、

「自分自身も楽しんでたから、娘ちゃんも楽しんでくれたんじゃないかなぁ」

と自信なさげに返信。すると友人は、

『なるほど。それは子どもに限らずだね。ちょっと忘れてたわ。』

とのこと。

 

静かになった部屋で一人、てつこは友人との問答を通して

ぼんやりと思い出していた。

3人であちこち行って楽しかったなぁ。

娘ちゃんも楽しかったって言ってくれたし嬉しいなぁ。

だから今一人だと寂しく感じるなぁ。

そして自分がLINEで送った言葉をまた見返す。

 

『自分自身も楽しんでたから、娘ちゃんも楽しんでくれたんじゃないかなぁ』

 

てつこは笑顔で接して、娘ちゃんも笑顔で返してくれた。

だからこんなことを思ったのだろう。

娘ちゃんを通じて、自分の昔を思い出す。

 

てつこが小学生や中学生の頃、家族旅行に度々出かけた。

夫婦仲は壊れているが、「家族」の形を重んじるてつ母の発案だった。

どこに出かけても険悪なままだった。

 

いつものてつこなら、ここまで思い出して恨めしい気持ちになる。

が、今回はちょっと違った。

てつ母とてつ父に申し訳ない気持ちがすこーし出てきた。

『(てつこが)いつもつまらなそうにムスッとしていた』ことが引っかかったのだ。

旅行先の思い出写真には、てつこのムスッとした顔がいつも映っている。

楽しくなかったから。

何をしても、何をされても、楽しくなかったし楽しもうとしなかった。

そんなてつこを笑顔にしようと、

てつ母はガイドブックやカメラや絵を書く用の色鉛筆やら、色々買い込んでいた。

でも何をしてもてつこには響かなかった。

 

あの時のてつ母の努力を思い出し、自分にも非があったかなーと思う。

そして「あぁ、なんて不器用な家族なんだろう」と笑った。

筋違いの母、車の運転しかする気のない父、そして不愛想な娘。

誰も楽しんでないんだもん、そりゃあ楽しくならないよなぁ。

 

あーあ、となんだか寂しさが増した。

友人には「また来いよ~」とLINEを送った。別れ際にも何回も言ったのに。

きっと今度来るときは娘ちゃんは大きくなっている。

っていうか、たぶん思春期になるし来ないだろう。

知らないおばちゃんとプリクラなんて撮ってくれないだろう。

 

あーあ、とまた寂しくなって溜息が出た。

まぁなんにせよ、楽しいひと時をありがとう。明日からがんばるぜよ。

あの日見た星の真実を僕達はまだ知らない。

(某アニメタイトルをリスペクトしました)

てつこが高校生の頃、確か7月くらいだったか、

とある高山の合宿所に学年全員で泊まりに行ったことがある。

広い広い合宿所で、それなりに標高の高い所に建っていた。

とても涼しかったのを覚えている。

高校生とはいえ1年生だったので、まだ子どもだった。

廊下を走り回ったり、虫にギャーギャー騒いだり、

些細なことでも笑い合ったり賑やかなものだった。

 

肝心の合宿の内容は、忘れた・・・。

確か・・・カレーを作ったかな?

早朝起こされてラジオ体操をした気もする。

あ、そういえばその山の頂上まで登山をさせられた。

今では友人にくっついて低山に登るのは好きだが、

以前は運動のうの字も嫌いだったので登山なんてまっぴらごめんだった。

だが強制である。登らざるを得ない。

ヒィヒィ言いながら頂上まで行った。

最悪だったのは、帰りの登山道を先導の先生が間違えたこと。

たまたまその先生の後ろにいたてつこはこの耳で聞いた。

「あ・・・・・・道、間違えた。(小さい声)」

おい。

へらへらと笑い「あーごめん。道戻ろうかぁwwww」と言う先生に

明らかな殺意を覚えた。(その後時間はかかったが無事戻れました)

 

合宿中頃の夜、合宿所前の広場でレクリエーションが開かれた。

確か、出し物をしたり先生のありがたいお話を聞いたりした。

合宿という普段とは違う環境で、みんなガヤガヤしていた。

 

てつこは友人達数人と輪になっていた。

星空を見上げていたのだ。

とにかくキレイだった。星が近くに見えた。キラキラしていた。

その感動はよく覚えている。

 

てつ「すげー、きれいだー!。」

A子「すごいねー!」

B子「あれ星座かな?」

C美「〇〇〇座じゃない?」

 

ずっと星空を見ていた。

・・・・・・・・・・そして、次の瞬間。

 

全員「・・・・・・・あれ?え?え?」

 

星が、動いた。

 

一つ、やたら輝いていた星が、ピッと私たちの右手側に移動した。

 

全員「・・・・・・・・」

 

右手側に移動したかと思ったら、すぐ左へカクカクと移動した。

 

全員「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

そして、パッと消えた。

 

全員「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

その場にはてつこ含む6人くらいがいたが、全員顔を見合わせた。

 

A子「何、今の?」

B子「UFOだ!!!!!!すげっ」

てつ「まじか!まじか!」

 

動く星に興奮した。

何人も同時に同じ現象を見たのにも興奮した。

興奮しまくりでずっと大声でみんなで喋っていた。

ただ一人、C美だけがずっと無言で空を見ていた。

 

てつ「どうしたん、C美?」

C美「うーん」

 

C美「まぁ、この山、出るって話だしね☆」

 

・・・何がだよ・・・

・・・何が出るんだよ・・・

 

一同、しーんとなった。

妙に冷静なC美のその一言が、オカルトな空気を一気に引き寄せた。

急に涼しくなった気がした。

そういえばC美、変な白い影が見えるときがあるとか言ってたな・・・。

普段は笑い飛ばしていたエピソードが、急に笑えなくなった。

 

その夜はみんな消灯と同時に寝た。トイレにも誰も行かなかった。

「饒舌」な「自分」を「やめたい」

てつこは他人と喋るのが苦手である。

でも人見知りはしない。

一見両立できないように見えるが、実際そうでもない。

てつこはお喋りしていて楽しい人だと先日褒めていただいた。

会社で新部署に移った今、初めて喋る人とも仲良くできている。

従って人見知りではない。

 

でも、他人と面と向かって喋るのはやっぱり苦手なのである。

 

そういう方は意外と多いのではないだろうか。

人付き合いはするけどホントは苦手。

そんな感じ。

 

てつこの場合、身体に出てくる。

喋ると「異様に疲れる」のだ。異様に。

ただ疲れるのではなく、恥ずかしさや虚しさ・苛立ちといった

負の感情によって疲れてしまう。

家に帰って気分が沈む。

仕事や飲み会・友人との食事が3日くらい続くと頭痛がしてくる。

寝ても寝ても負の感情が忘れられなくなる。

これは菊池真理子さんのエッセイ1話目の描写と似ていてとても共感した。

arc.akitashoten.co.jp

 

特に「疲れる」から「やめたい」ことがある。

それは、テンション高くやたら喋ってしまうこと。

「饒舌」をやめたい。

相手が初見だろうとちょっと話したことある人だろうと、

よほど心の許せる相手じゃない限り饒舌スイッチが入る。

そして場を和ませようと、さも楽しげに喋り続けてしまうのだ。

(一方で、信頼している相手には無理には喋らない。

 むしろ聞き手にまわることが多い。。。)

 

一番自分で自分を許せないのは、

大して信頼していない相手にてつこの家の事情や

てつこのその時の悩みなんかをペラペラ喋ってしまうこと。

適当な話題が無くなった時なんかにしでかしてしまうことが多い。

会話をしていて話題がなくなり沈黙になると、

(やばい、なんか話出さなきゃ・・・!)と反射的に考え、

自分の話題を出してしまう。

後日、「てつこさんって大変だね~」とか言われて

(あれ?この人にこんなこと喋ったっけ・・・???」)となる。

そして自己嫌悪に陥る。恥ずかしい。メンドクサイ。何やってんだ自分。

・・・こんなことが未だにやめられない。

 

なんでだろう。

沈黙が嫌なのかな。

ノリの悪い奴と思われるのが嫌なのかな。

もっと考えると、険悪な雰囲気のてつ家の中で

食卓で明るく話題を振りまこうとしていた子どものてつこが

身に着けた処世術なんだろうな。

でも、もうそんなモノいらないはず。

それに雰囲気とか沈黙とか気にしなくてもいいはず。

 

明日は月曜日。

また昼休みにペラペラ喋って楽しげに演じるのか。

またテンション上がって一人トイレでぐったりするのか。

憂鬱だ。

コントロールできない自分が嫌だ。

 

『いらんことゆーな!』

これからはもう一人のてつこにツッコミになってもらおう。

てつこの饒舌スイッチが入ったら即ツッコんでもらう。

新しいインナーチャイルドの役割、なんてな。

勤勉少女と内気な女子大学生

てつこは学生時代、アルバイトで公文の先生をやっていた。

先生といっても小学生の答案に〇×つけるだけの簡単なお仕事。

その教室を開いている””本当の””先生は、

子ども自身に最後まで解かせるために

「ここはこうだよ」とか教えないようにてつこに指導していた。

そのため、ホントに〇と×を赤ペンでつけるだけで、

子どもたちとの触れ合いはほとんど無かった。

 

でも、今よりも内気で人見知りで子どもが苦手だったてつこにとって

これほどラッキーなアルバイトはなかった。

時給も良く、難しいこともなく、他の先生たちは優しく、

適度な夜の時間帯までバイトさせてくれるので居心地がよかった。

気付けば毎日のように採点していた。

 

その公文教室に、一人だけ大きい子がいた。

大きい、といっても背ではない。

高校生だ。

小学校低学年の子たちが賑やかな夕方が過ぎ、

外が暗くなり始めた頃、その子はそっと来て奥の端の席に座る。

 

相変わらず小学生の子たちは騒がしい。

走り回るわ、「できた!」と叫ぶわ、物は落とすわ、

たまーにおもらしする小さな子もいて、てんやわんやだ。

そんな中でも彼女は奥の方で黙々と教材を解く。

 

いつの間にか周りは中学生ばかりになり、静けさを取り戻す。

てつこ以外のバイトの先生たちは帰宅する。

教室が閉まる夜までは、本当の先生とてつこの二人体制だ。

そのくらいの時間帯になって、高校生の彼女はできた答案を

まとめて提出してくるのだった。

今思えば、小学生の対応で忙しい先生側に配慮していたのだろう。

 

てつこはそれまで知らなかった。

公文には高校生クラスの教材があることを。

彼女はそれを繰り返し繰り返し解いていた。

本当の先生曰く、高校生レベルの教材は全てやりつくしたとのこと。

どのくらいの数があるのかは知らなかったが、

全てやったのにはとても感心した。

 

一番感心したのは、彼女にはご家庭の事情があり

この公文教室でがんばりたいと本当の先生に伝えていることだった。

どんな事情かは聞かなかったが、何にせよ

教室が閉まるギリギリまでたくさんの教材を解き、

すぐ単語帳やキャンパスノートに書き込んでいる姿を見て、感動すら覚えた。

 

大学生のため一番「現役」に近いという理由から、

てつこは彼女の答案担当になった。

彼女はとても静かな子だった。お喋りは一切しない。

一方のてつこも喋らない。心の中では

「がんばれ!がんばれ!フレー!フレー!」

と熱くなっているのに、フフンと素っ気ない対応をしていた。

(あぁ、ちょっと気の利いたトークくらいすればよかった・・・)

 

ただ、彼女の頑張りにこちらも応えたくて、

細かいコメントを書いたりして役に立てるよう気を遣った。

彼女に伝わったかは全く不明だが、

それくらい気持ちを入れたくなる子だった。

 

一番心残りなのは、就活が忙しくなってしまい、

結果を知る前に公文の先生を辞めてしまったこと。

無事に希望の大学に合格したのか、もはや知る術はない。

 

彼女は今どうしているだろう。

会社員だろうか、主婦だろうか、フリーな感じだろうか。

いずれにしても、あの勤勉さが無駄になることはないはずだ。

「やろうと思って真剣に取り組むこと」

って意外と難しくて長続きしない。

それを高校生で実践できた彼女は、きっと強い人間になっている、かな。

 

どうか幸せでありますように。