てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

私はメンヘラなんかじゃない。でも、助けてくれ(1)

てつこ自身の話。

てつ父とてつばあがお金を工面し、てつ家は貧乏ながらも大学に進学させてくれた。

てつこ自身も塾には行かずに内申をひたすら上げて、中堅大学に推薦してもらえた。

 

ただ、この頃からてつこの心に変化が見え始めた。

 

高校の友人達といても楽しくなくなってきた。

周りの友人達と話が合わない、話をしても楽しくない。

もっと言うと、見下すようになっていった。

こいつら、ダメだ、バカだ。

こいつら、恵まれてるくせに、何もできやしない。

 

荒んだまま大学に進学した。

大学では講義に集中し、サークルも合コンも見向きもしなかった。

他人と会って話をしても楽しくなかった。

ちょうどこの頃てつ母はてつ家を出て行った。

てつこは晴れ晴れする

 

・・・はずだった。

実際は心がもやもやと、何をしても楽しくなく、何を食べてもおいしくなく、何を見ても新鮮に思えなかった。

昼は大学の食堂でカップ麺をすするか、何も食べずに過ごした。

夜は相変わらずコンビニやスーパーのお弁当を食べた。

体重は3か月で10キロ落ちた。

それでもてつ父にお金頂戴と言えなくて、1円でも10円でもケチるため、まず昼食費を削ったのだった。

じんましんが突然出るようになった。

大学の講義が終わると意味もなく大学や駅周辺をぐるぐると歩き回るようになった。

時々、頭がふわふわとするような、自分が今どこにいるのかわからなくなるような、

奇妙な感覚に陥るようになった。

 

こうなってくると流れは速い。

 

タバコを吸うようになった。

ある日ベランダで吸っていて、ふと何気なく、理由なんかなく、なんとなく、

自分の手の甲に押し付けた。

すごく熱かった。

ただ、「熱い」と感じられたことがとてもおもしろかった。

それから時々この奇妙な行動をするようになり、押し付ける時間も長くなっていった。

ニコチンが欲しいのではなく、自分に押し付けるために吸うようになった。

 

漠然と、しにたいと思うようになった。

子どもの頃と同じ。

環境は変わったはずなのに、頭に浮かぶことは子どもの頃と変わらなかった。

突然、漠然とした「しにたい」。

タバコの根性焼きと同じで理由なんてない。きっかけもない。

何をしても何を見ても、自分の心が反応しない。

だから「しにたい」。

人は楽しみも苦しみも無くなると、生きていてもしょうがないと思うらしい。

それがまさか、自分を襲うなんて。

 

 

行きつく先は、ここだった。

てつこはカミソリや包丁で腕や首や胸を切るようになった。

血が流れて「痛いなぁ」と感じることが、心の反応に思えておもしろかった。

結局、生きようとしている。

そう、全ては子どもの頃の、なわとびをベッドにくくりつけたときと同じ。

 

赤く汚れた机や床を拭きながら

へらへらとてつこは笑うようになっていた。