物を買い漁った先に、彼女は何を求めたのか。
てつ母はかわいらしい女の子らしい洋服やグッズが好きだった。
てつこの髪の毛をかわいらしく縛り、
フリフリでメルヘンな洋服を着せ、
赤やピンクのエナメルのピカピカな靴を履かせた。
てつこはそんな洋服大嫌いだったが、言えなかった。
言うとてつ母は泣きながら「なんで反抗するんだ!この子は!」と罵った。
その内てつこは、てつ母の趣味に自ら寄せた。
てつ母は上機嫌になった。
そしててつこが「これカワイイね」と言った洋服を何着も色違いでそろえるようになった。
その洋服は決して安くないもので、デパートで買うようなブランドだった。
てつ母は毎週土日になるとてつ父の運転する車でデパートに赴き、
10万20万…と洋服にお金をつぎ込んだ。
一時期、お得意様フロアにも通ったこともあるくらいだ。
勿論、普通のリーマンのてつ父の給料では賄いきれず、借金をして、自己破産した。
それでもてつ母の買い癖は治らなかった。
毎週、郊外の大きなスーパーやドラッグストアに車で出かけては、
化粧品や日常使う洗剤をいくつも買いだめした。
毎週通っているのに、ドラッグストアで1万も2万も使っていた。
当然、てつ家には未使用の化粧水やら石鹸やらが溜まっていた。
てつ母は「買い物」で「何をしたかった」んだろう?
デパートに行っていた頃はとても得意気だった気がする。
ドラッグストアに行っていた時も、自分の好みの物を探すのに真剣だった気がする。
「買い物」で何かを忘れようとしていたのだろうか。
確かに買い物をしていると余計なことを忘れるし、
良い物に出会った時は嬉しさを感じる。
てつ母も同じだったのろうか。
その買い物への熱意を、てつこに向けてほしかった。
真剣に洋服なんかを選ぶなら、真剣にてつことてつ父のことを考えてほしかった。