てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

父へのレクイエム

てつこは疲れると、何故か夢にてつ父が出てくる。

つい先日もてつ父の夢を見た。

てつ家の車でホームセンターに出かけて

てつこは好きな物を買い、てつ父は「明日の朝食べるから」とパンを買った。

なんてことのない夢。

 

夢の中でてつ父は笑っていた。

「どれにしようかなぁ」とどのパンにするか悩み、てつこにたずね、微笑みかけた。

 

そうあってほしかった日常。

 

笑いに溢れていてほしかった日常。

 

そんな夢を見て、いつもどんよりとした気持ちで朝起き上がる。

何故こんな夢を見たのか。

何故今更こんなことを願うのか。

てつ父の夢に限らず、てつ家に関する夢を見た日はいつも気が重い。

一日分の疲れを背負って起き上がる感じ。

時には泣きながら起きることも未だにある。

 

 

てつ父は今生きているのだろうか。

数年前に生活保護を申請したという手紙が来た。

生活保護を申請すると、把握できる親族、とくに子どもには連絡が行くという。

多少でも援助できるかどうか、それを尋ねる内容の書面だ。

援助をする義務はなく、あくまでも任意である。

無理をして少額援助すると、生活保護の額がその分減らされてしまうとも聞いた。

それらを知っていたので驚きはしなかったが、多少動揺した。

あの父が。

てつ父が保護を。

 

てつこは援助を一切拒否した。

てつこの給料で定期的にてつ父を援助するのは不可能だった。

 

あれから連絡は何もない。

生きているのだろうか。元気なのだろうか。どんな家にいるのだろうか。

ずっと心に引っかかったまま。

でもお互いそれ以上のコンタクトは取らない。

それが、てつ父とてつこの関係性。

 

てつこは真面目にこう思う。

頑張って働くよ。

働いて税金はいくらでも納めるよ。

どうかこの税金のどこかの部分で、てつ父の援助になるのであれば、いくらでも。

今のてつこにできることはこんなもんだ。

てつ父一人の面倒も見れない、見る気もない娘だけれど、

感謝の気持ちと安泰を願う心は忘れちゃいない。

どうか、穏やかな余生を送ってほしい。

 

都合が良いのはわかっちゃいるが、こんな考えがやめられない。