てつこはじと目でなにを見る?

おかしな家で育ったおかしな娘が書く読み物

寿司と金髪青年とわたし。

未だ暗闇をうろうろしている、てつこ。

おも~いくら~い感情と戦う中、ふと思い出した出来事がある。

 

数年前、ちょいちょい通っていた回転寿司屋があった。

安すぎもせず高すぎもせず、仕事帰りにちょうど良い店だった。

ある日もまた、ふらりと立ち寄った。

少し遅い時間で、ラストオーダーの時間も近かった。

ぱくぱくと食べていて途中で気付いた。

数席あけた横の席に、外国人の男性が座っていた。

色白で金髪で青い目をしていたのですぐ外国の人だとわかった。

 

彼の手元にはまぐろの赤身のお皿があった。

そして割りばしに手を伸ばす。

慣れない手つきで数秒かけて割りばしをわった。

「あぁ、もしかして・・・」

てつこは思った。

予想は当たっていた。

彼は箸をこうでもないああでもないと持ち替えて、

まぐろの握りをつかもうと悪戦苦闘していた。

「お箸に慣れていないのかぁ・・・」

てつこは見てないふりをしながら、横目でチラチラ見る。

まぐろと格闘する彼。

まるで生きたまぐろと戦う松方弘樹のよう。(んなこたーない)

なんとか、なんとかして、まぐろとすし飯を口に運んだ。

 

ほっとする、てつこ。

 

・・・なんだか一緒に戦っている気になってきた。

がんばれ、がんばれ青年!異国の人よ!

 

彼は勇敢にも、回っているもう一つの皿に手を伸ばした。

そしてまたもや格闘が始まる。

 

・・・てつこが退店するまでに2皿くらいしか食べれてないのではなかろうか。

それでも、お寿司のネタとすし飯が分離しても、

箸が持ちにくくて口に運べなくても、

青年は諦めなかった。

なんと素晴らしい!アンビリーバボー!!!ソー、クール!!!

 

彼の勇気を称えるとともに、

てつこお得意のマイナス思考が発揮される。

「ちょっと声をかけてお箸の持ち方アドバイスでもすればよかったか?

 いや、そんなんおせっかいだし、英語できないし。

 でもかなり悪戦苦闘してたぞ?なんかしてあげたいし・・・」

悶々としながらその日は家に帰ったのであった。

 

実は今でも「なんか声かければよかったな」と青年のことを思い出す。

一度心に引っかかるとなかなか取れないのである。

別にてつこが悪いことをしたわけではないのに。

そんなことを思いつつ、やはり彼のチャレンジ精神が印象的だったのだ。

だから今でも思い出す。

今頃はお箸の持ち方、慣れてるかなぁ。

 

てつこも異国の料理にチャレンジしてみようかな。

うつに効く食事はないものか。

シュラスコで肉を食らうか。スペイン料理でフラメンコ見ながら食べるか。

はたまたボルシチ食べて温まるか。

本当は安らぐ人と一緒にわいわい食べるのが一番なのだろう。

まぁ、一人でもいい。

いや、今は一人がいい。

今週平日乗り切ったら、ご褒美に何か食べに行こう。

ひとしきり泣いて、今夜も早めに寝ます。